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ホーフパヴィリオン ヒーツィング駅 ( 1/2 )
Stadtbahn Station Hofpavillon Hietzing
ウィーン、オットー ヴァーグナー、1899年
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皇帝専用の駅舎

ウィーンの観光名所で世界遺産に登録されているシェーンブルン宮殿。その最寄り駅のひとつであるヒーツィング駅の端部に、ハプスブルク家の君主にして神聖ローマ帝国・オーストリア=ハンガリー帝国の皇帝が、市内の王宮とこの離宮 註1 を行き来する際の皇帝専用駅舎ホーフパヴィリオンが残っています。
 
しかし、鉄道より馬車による移動を好んだ時の皇帝フランツ ヨーゼフはこの駅舎を一度も利用せず、結局、皇妃エリザベートがここから一度だけ乗車した以外はまったく使われませんでした。専用駅舎の建設だけでも贅沢な話ですが、それを使わないという無駄遣いぶりには驚かされます。

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当時のまま保存

現在のヒーツィング駅は一般客が利用する普通の駅で、ホーフパヴィリオンとはホームの反対側にある駅舎が一般用に使われています。ホーフパヴィリオンは当時のまま保存されていて、私が訪れたときは冬季休業中でしたが、それ以外の時期は内部も公開されています。

設計者

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ホーフパヴィリオンを設計したのは、ウィーン建築界の中心人物だったオットー ヴァーグナー。彼は市営鉄道の駅舎の設計を一手に引き受けていました。それらの駅舎は地下鉄U4・U6号線に現役で残っています。右の写真は彼が設計した標準的な駅である ケッテンブリュッセンガッセ駅です。
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意外に小さい

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ヴァーグナーが設計した駅舎のうち、ホーフパヴィリオンと カールスプラッツ駅だけは特別に瀟洒なデザインで建てられています。
 
「皇帝専用」の響きに期待してホーフパヴィリオンに行くと、意外に小さくてやや拍子抜けしますが、しかしこれはなかなか面白いデザインです。
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機能と伝統との間で

バロック様式のドームや車寄せなどの各部の意匠が目を引くところですが、それよりも注目したいのは全体的な構成で、装飾を除外すれば実は箱状の建物の上にドームを載せただけという単純な構成に過ぎません。
 
新たに登場した駅舎という建築の機能性と、ハプスブルク家のための宮廷建築というふたつの要素の整合性にヴァーグナーが苦心した様子が、この構成からうかがえます。

見学コースの案内

現地を訪れるときは、シェーンブルン駅で降りて宮殿 → 庭園 → 温室(パルメンハウス) → ホーフパヴィリオンというコースがいいでしょう。

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車寄せ
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照明
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手すり
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街灯
名称

ホーフパヴィリオン ヒーツィング駅

Stadtbahn Station Hofpavillon Hietzing

設計者

オットー ヴァーグナー(オットー ワーグナーとも)

Otto Wagner

所在地

ウィーン13区

用途

竣工時:駅、現在:記念館

竣工

1899年

構造・規模

未確認

交通

鉄道:地下鉄U4号線 Hietzing 駅下車

備考

内部は一般公開されている。ただし冬季は休業。公開期間や開館時間、入場料は下記リンク先で確認のこと。

マーカー上からホーフパヴィリオン ヒーツィング駅、パルメンハウス


補註

  1. ハプスブルク家のメインの居城はウィーン中心部にあるホーフブルク王宮。シェーンブルン宮殿は離宮である。

参考文献

  1. 『世界の建築・街並みガイド5』30頁、エクスナレッジ
  2. 『図説ウィーン世紀末散歩』南川三治郎、河出書房新社

リンク

  1. オットー・ワーグナー ウィキペディア
  2. wien.at > Otto-Wagner-Hofpavillon Hietzing
  3. WIEN MUSEUM > Otto Wagner Hofpavillon Hietzing

公開日:2003年1月3日、最終更新日:2011年6月11日、撮影時期:2002年1月
カメラ:Nikon COOLPIX 775(Photoshopで修正)

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