Google Earthのキャプチャ、中央がシュテファン大聖堂
ウィーンの中心に聳える大聖堂
中欧の主要都市であるオーストリアの首都ウィーン。その古都のシンボルとなる建築はふたつあって、ひとつはハプスブルク家の離宮であるシェーンブルン宮殿、そしてもうひとつがシュテファン大聖堂です。街の郊外にあるシェーンブルン宮殿に対し、かつて城壁に囲まれていた旧市街のほぼ中心に聳えるシュテファン大聖堂は、まさにウィーンのランドマークといえるでしょう。
ウィーンは古い歴史をもつ都市ながら、世界遺産に指定されている旧市街「ウィーン歴史地区」内の主な建築物は、バロック様式をはじめ近世以降のものが多く、中世のロマネスクやゴシック様式は意外と少ないのです。その中で、シュテファン大聖堂はヨーロッパの代表的なゴシック建築のひとつとしても知られています。
【02】
密集したまちなみ
写真02は、グラーベン通りからシュテファン広場越しに見た大聖堂の西・南立面で、最も外観が把握できるアングルです。右上の写真は南塔の底部。視線の引きが取れないために部分的にしか見えないことが、建物の大きさを物語っています。
【03】
建設と増改築の過程
多くの古い教会建築と同様に、シュテファン大聖堂も何度か増改築を繰り返しています。最初の教会は1160年頃に完成しますが、現存する最も古い部分は、初代を踏襲して建てられた二代目教会のうち、西立面の正面入口(写真は撮り忘れた)と両側の小塔(写真03)、内部の西立面部分になります。後期ロマネスク様式で1263年に完成。
14世紀に入ると大規模な増築工事が行われます。まず1304〜1340年に東側の内陣を増築し、1359年から南塔の建設(後述)と外陣の増築に着手。既存建物の外側にゴシック様式の新たな外壁(写真01)を建てる方法で外陣を拡幅した後、二代目教会の側面は1460年に解体されました。
【04】
南塔と北塔
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南塔は階段で、北塔はエレベーターで上ることができ、とりわけ南塔からのウィーンのまちなみはぜひ見ておきたいところ。ただし、螺旋階段を延々と上るので体力が必要です。
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ライトアップ
ライトアップも実に見応えがあります。筆者は夜にウィーン入りしてまず訪れたのがシュテファン大聖堂だったのですが、静まりかえった古都のまちなみに浮かぶゴシック建築の威容を見たときは、鳥肌が立つほど感動しました。
内部
内部では、ゴシック建築特有の柱が林立する大空間はもちろん、随所に施された彫刻も見事なものです。特に棟梁アルトン ピルグラム作の説教壇やオルガン支持台は必見。なお、筆者の技術とカメラの性能がともに未熟だったため、内部の写真は撮っていません。
また、ペストで亡くなった人々の遺骨がギッシリと積まれた地下の墓所(カタコンベ)も公開されています。もし閉じこめられたら数分で正気を失うような空間です。そういう場所を見せたり、その上でミサをする点に、日本人とヨーロッパ人の宗教観というか死生観の違いが感じられて興味深い。
名称 | シュテファン大聖堂(シュテファン寺院とも) Stephansdom |
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設計者 | 不詳 |
所在地 | オーストリア、ウィーン1区 |
用途 | 教会 |
建立 | 初代の教会は12世紀に建立されたが残っていない。現存部分はおおむね13〜16世紀の建設。 |
構造 | 石造 |
交通 | 鉄道:地下鉄U1・3号線 Stephansplatz駅下車 |
備考 | 世界遺産(ウィーン歴史地区として) 内部見学は可能ですが、信者の方の迷惑にならないよう配慮してください。ミサのときは観光客は退出します。 |
左からハース ハウス、シュテファン大聖堂
参考文献
- 『建築巡礼13 ウィーンの都市と建築 様式の回廊を辿る』川向正人、丸善
- 『世界の建築・街並ガイド5』12頁、エクスナレッジ
リンク
公開日:2003年1月26日、最終更新日:2012年4月22日、撮影時期:2002年1月
カメラ:Nikon COOLPIX 775(Photoshopで修正)