【02】
門司港駅前の古いビル
レンガや装飾といった分かりやすい近代建築ではないので、多くの人は見過ごしてしまいがちですが、このビルも門司港の歴史にとって重要な証人です。
【03】
建物の歴史
このビルは三井物産が門司支店の3代目の建物として昭和12年に建設。戦後の財閥解体に伴い国鉄の所有に移ってからは国鉄九州総局や門司鉄道管理局として、分割民営化後はJR九州の北九州本社として使われてきました。
2001年、JR九州は福岡市・北九州市の二本社体制を福岡市に統合してこのビルは空き家になります。JRは解体するつもりでしたが、保存を望んだ北九州市が2005年に取得。その後もしばらく空き家の状態が続きましたが、2011年4月から1・2階を観光施設などに使い始めています。
【04】
建築的な特徴
ビルは鉄筋コンクリート造の6階建。昭和初期としてはかなり立派なオフィスビルであり、大手商社がこのような高層ビルを建てたことに、戦前の門司港の繁栄ぶりがうかがえます。
外観は縦方向に並んだ凸部が特徴的です。凸部の半数は本物の柱型、残り半数は壁をフカシて柱型と同じ見た目に仕上げて、柱型を太めの方立のように見せています。この密集した柱型と縦長の窓が、立面の垂直性を強調しています。そのまま視線を上に向けると、上端(パラペット)に付けられたテーパー(傾斜)によって、立面から感じた力強さがスウッと抜ける印象を受けるでしょう。テーパーがボリューム感の低減に効いています。
【06】
エントランス
【07】
内部
同館の目玉は、関門海峡を航行中の船舶をリアルタイムに把握できるシステムで、ライブカメラとAIS(船舶自動識別装置)を来場者が手元で操作すると、個別の船の所属・大きさ・行き先といったデータがモニターに表示されます。船舶や交通システムが好きな人には堪らないでしょう。
補註
- 建築ガイドブックには旧JR九州第一庁舎と載っているが、新聞には旧JR九州本社ビルと書かれることが多いので本稿はそちらに従った。もちろん、旧三井物産門司支店でも差し支えない。国鉄時代は門鉄ビルと呼ばれていた。門鉄(もんてつ)とは門司鉄道管理局の略。
- 最上階には門司鉄道管理局時代の司令室の設備が今も残っている。貴重な産業遺産であり、何とか公開してほしいものである。
参考文献
- 『北九州の近代化遺産』北九州地域史研究会、弦書房
- 『福岡県の近代化遺産 福岡県文化財調査報告書 第113集』福岡県教育委員会
- 『建築グルメマップ2 九州・沖縄を歩こう!』59頁、エクスナレッジ
- 『建築MAP北九州』134頁、TOTO出版
リンク
- 北九州イノベーションギャラリー > アーカイブ > 産業遺産情報 > 三井物産門司支店
- 旧三井物産門司支店、松田軍平 ウィキペディア
- INAX REPORT > バックナンバー No.167〜178 > No.176 目次 > 特集1:生き続ける建築10─松田軍平
- 関門海峡らいぶ館
- 北九州市門司区 > 歴史・観光・文化 > 思ひ出ステーション門司
公開日:2004年11月6日、最終更新日:2012年6月17日 写真を差し替え、文章を一部修正・追記、撮影時期:2011年11月
カメラ:Nikon D50・Canon PowerShot S90(Photoshopで修正)