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リバーウォーク北九州 ( 1/3 )
Riverwalk Kitakyusyu
福岡県北九州市、ジョン ジャーディ+日本設計、2003(平成15)年
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【01】
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【02】

事業の概要

リバーウォーク北九州は福岡県北九州市の中心部にある建物で、店舗・劇場・美術館・事務所・放送局・大学などが入っている大型複合施設です。北九州市は、「北九州市ルネッサンス構想」というまちづくり計画に基づき、同市を流れる紫川を対象に「紫川マイタウン・マイリバー整備事業」を進めています。同事業では河川の環境整備だけでなく周辺市街地の整備も実施しており、その一環である「室町一丁目地区第一種市街地再開発事業」によって、リバーウォーク北九州は建設されました。

設計者について

リバーウォーク北九州を設計したのはアメリカの建築家ジョン ジャーディ氏と大手設計事務所の日本設計です。ジャーディ氏は革新的なショッピングモールのデザインで知られており、日本でも福岡市のキャナルシティ博多(建築マップの記事 Atsushi版炉扇庵版)をはじめ、なんばパークス(大阪市)など複数の複合商業施設を手掛けています。

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【03】左奥は北九州市庁舎

リバーウォークのイメージと実際

リバーウォークという名前から親水空間を期待する人がいるかと思いますが、河川に面しているのは建物の一部分に過ぎず、その川沿い部分も巨大な壁面が向いていて、必ずしも川に開いているとはいえません。実際に河川を取り込むのは難しいにしても、視覚的に内部から紫川の存在がほとんど感じられないのはこの施設で最も惜しい点です 註1

建築デザインの変遷

この建物でまず目を引くのは、曲面を多用した複数のボリュームが寄せ集まったデザインです。設計現場へ3次元CADが普及して以来、不定型な形が建築デザインの主流になりました。北九州市役所(久米設計、1972)と比べるとその変化は一目瞭然です。
 
鉄とガラスの市庁舎は、アメリカの資本主義をバックにミース ファン デル ローエが生み出した20世紀モダニズム建築の典型例。一方のリバーウォーク北九州は、アメリカのグローバリズムとコマーシャリズムが生み出した21世紀のテーマパーク建築といえるでしょう。

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【04】

北九州市の歴史を一望

写真04は北九州市役所最上階の展望室からの景観。小倉城や大名屋敷、日本庭園、神社といった伝統的エリアの隣に、極彩色の巨大な建築が出現しました。リバーウォーク北九州の背後にはタワーマンション、そして写真では分かりにくいのですが遠方には工場地帯と、この景観には近世〜近代〜現代に至る北九州市の歴史が凝縮されています。

色彩の意味

様々な色彩を織り交ぜたキャナルシティ博多に対して、リバーウォーク北九州はひとつのボリュームにひとつの色を割り当てる色彩計画で、公式サイトによると、茶は大地、黒は日本瓦、白は漆喰壁、赤は漆、黄は収穫前の稲穂を表現しているとのこと。何だかこじつけ気味ですがそれはいいとしても、川のイメージが入っていないのは施設名称と合致しておらず、いささか疑問を感じます。

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【05】勝山公園から見た景観。左からタワーマンション、小倉城、リバーウォーク北九州、北九州市役所
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【06】

歴史的景観との関係

リバーウォーク北九州の完成によって小倉城周辺の歴史的景観は一変しました。そのあまりに大胆なデザイン故、市民の間には賛否両論がありますが、当初は戸惑いを感じていた市民も次第に好意的に受け入れているようです。
 
また、小倉城の天守閣は本当の歴史的建築物ではないことも指摘しておく必要があります。かつての小倉城は1837年に焼失。今の天守閣は1959(昭和34)年に鉄筋コンクリート造で再建されたもので、建築学的に正確な復元ではないのです。とはいえ、長年親しまれたシンボルですし、石垣やお堀は昔の遺構なので、歴史的価値がないとはいえません。
 
ともあれ、どのようなデザインだろうと巨大建築は存在そのものが歴史との調和が難しい以上、商業性に徹するしかないでしょう。

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【07】

5つの分節の意味

ボリュームごとに5つの色が使われていると前述したように、外観は5つのボリュームに分節されています(2期工事部分は除く)。図面を読むと実際はほぼひとつの建物で、茶色の球体状の部分だけが別棟のようです。5つの分節には巨大建築のボリュームを緩和する効果があると共に、五市合併で北九州市が成立した経緯 註2 を踏まえて五地区が一体化する意味も込められています。
 
デザイン上の見所である分節した立面を小倉城側に向けたのは、伝統と現代の対話の意味では妥当なプランですが、お堀沿いの樹木に隠れてしまい、立面を一望できるポイントは意外と少ないのが実情です 註3 。せっかくのデザインが人目に触れないのは惜しい気がします。

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外壁色がお堀の水面に映り込んで黄色に染まってしまい、少々見苦しい。せめて黄色以外の色にできなかったものか。
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小倉城側の造形とは対照的に北側道路には垂直な壁面がそそり立つ。デザイン的に分割しても圧迫感は否めない。
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手前は二期工事の部分で西日本工業大学が入っている。ポストモダンデザインを得意とするマイケル グレイブスの設計。
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そのポストモダンな建築と某神道系宗教建築との対比。ものすごいギャップだ。
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