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竹末団地 ( 1/2 )
Takesue Public Housing
福岡県北九州市、内井昭蔵、 1993(平成5)年
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北九州市のモデル事業的な団地

竹末団地は北九州市八幡西区にある市営住宅で、現在の建物は昭和30年代の古い建物からの建て替えで平成5年に竣工しました。その特徴としては(1)水と緑が豊かなランドスケープ (2)多様で配慮が行き届いた住棟デザイン (3)高齢化社会に向けたまちづくり、の3点が挙げられます。
 
まず(3)について説明すると、竹末団地の隣には「ふれあいむら竹末」という高齢者専用集合住宅と西部障害者福祉会館というデイサービスセンターが同時期に建てられました。これら3つの建物とも内井昭蔵事務所の設計で統一したまちなみが形成されています。大都市の中でいち早く高齢化が進む北九州市にとって、これら一連の建物はモデル的な事業なのでしょう。
 
なお、団地以外の2施設はその用途から撮影を遠慮したため、本稿では竹末団地に限定して紹介いたします。

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水と緑に溢れた住環境

竹末団地の最大の魅力は何といっても水と緑の豊かさです。公団(現UR)住宅は別として、自治体の公営住宅は植栽が乏しい場合が多く、これほど緑に溢れてランドスケープデザインが充実した公営住宅はあまり例がないはずです(そこに日本の住宅政策の貧困さが現れているわけですが)。
 
さらに、敷地内を流れる水路について、従来はコンクリートで固めてフェンスで囲うところを、親水空間に整備したことも注目すべきポイントです。団地建設時に設ける人工的な水路ではなく、昔からあった水路を親水空間に活用した事例は、団地の分野では珍しいと思います。

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蛇行する水路に合わせた住棟配置

団地といえば、住戸を南に向けたヨウカン型の住棟が規則正しく並んでいる景観を、多くの人は思い浮かべると思います。しかし、竹末団地は一般的な南面平行配置ではなく、湾曲した住棟が敷地を蛇行する水路に沿うように並んでいて、変化に富んだ景観を見ることができます。平行配置を避けたため、必ずしも南向き住戸ばかりではないのですが、おおむね南か東向きになるようその辺は上手く計画されています。

筆者に南面平行配置の団地を否定するつもりはない。ただ、現代の集合住宅計画においては、各住戸の採光条件を均等化するよりも、景観やランドスケープの充実を図るべきだろう。

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バルコニーを利用したゲート

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住棟は一般の団地よりもかなり細かく分割されて随所に隙間が生じており、その上部をバルコニーでつなげることでエントランスゲートを形作っています。隙間を通して樹木が見えて、その狭い路地状の隙間を通り抜けると目の前に中庭が広がります。
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駐輪場もオリジナルデザイン

一般に、団地の駐輪場は既製品の建屋を用いる場合が多いのですが、竹末団地ではこれも建物に合わせて違和感なくデザインしています。住棟の出入口にあるので防犯面で安心できる上、屋根を分割することで存在感を和らげています。

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メンテナンスの配慮

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配管類は、階段室まわりのアクセスしやすい位置に露出しています。建物の躯体より早く更新の必要がある配管を外部に露出することは、メンテナンスのコストを抑える上で有効な手法です。露出といっても外からは配管の存在はほとんど分かりません。
 
このように、まちづくりからランドスケープ・意匠・メンテナンスまで総合的にデザインされた竹末団地は、集合住宅設計の素晴らしいお手本といえるでしょう。
建物名

竹末団地

Takesue Public Houseing

設計者

内井昭蔵 / 内井昭蔵建築設計事務所

UCHII Syozo / S. Uchii Architects

内井昭蔵氏の逝去後、事務所名を内井建築設計事務所に変更。

所在地

福岡県北九州市八幡西区若葉1

用途

集合住宅

竣工

1993(平成5)年

構造

鉄筋コンクリート造

交通

鉄道:筑豊電鉄 今池駅下車 徒歩10分

バス:若葉2丁目バス停下車

車:国道3号線 > 樋口町交差点 > 県道11号線 > 引野3丁目交差点を右折

備考

見学・撮影の際は住民のプライバシーに配慮してください。

参考文献

  1. 『at』1995年9月号 公共スペース研究 北九州市、デルファイ研究所
  2. 『建築MAP 北九州』122〜123頁、TOTO出版

公開日:2010年11月21日、最終更新日:2010年11月21日、撮影時期:2010年11月
カメラ:Canon PowerShot S90(Photoshopで修正)

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