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北九州市立戸畑図書館 ( 2/4 )
Kitakyushu City Tobata Public Library
福岡県北九州市、福岡県営繕課 + 青木茂、1933(昭和8)・2014(平成26)年
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【201】

リファイニング建築の重要な一作

戸畑図書館へのリノベーションを手掛けたのはこの分野の第一人者である建築家の青木茂氏です。青木氏は老朽化した既存建築物を大胆に改修して再生を図る「リファイニング建築」註6 を提唱し、既に多くの実績があります。これまでのリファイニング建築が外観の大幅な変更を伴っていたのに対して、今回は歴史的価値を尊重して外観はできるだけ変えない方針が取られており、新たな方向性を示した戸畑図書館はリファイニング建築における重要な一作となるでしょう。

八女市多世代交流館

初期のリファイニング建築、八女市多世代交流館 共生の森(福岡県八女市、2001・平成13年)、元は1972・昭和47年竣工の老人福祉センター

なお、リファイニング建築は広義にはリノベーションの一種と解釈できます。リノベーション事例の全てが耐震補強を伴うわけではないのに対して、建築を一旦スケルトン状態に戻して耐震補強や減築等を行い、既存不適格事項を現行法規に適合させるなど、非常に高度な改修である点がリファイニング建築の特徴です。また、役所から図書館に変わった本件のように、建築の使い方が大きく変わる場合はコンバージョンとも呼びます(法的には用途変更という)。

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【202】東立面(ファサード)
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【203】ファサードの装飾
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【204】エントランス

ファサード

東立面であるファサード(正面)は、外壁やエントランス庇の補修、サッシの更新、スロープのやり替えが目に付く程度で、大きな変更箇所は見られません。ファサードを観賞するに十分な視線の引きが足りないため、ファサード側から塔屋の方形屋根はほとんど見えませんが、そもそも戸畑市役所の建設時に視点場が確保されなかった以上、敷地外のことは今さら仕方がない話です。昔は低層建築ばかりだったので、そこまで意識が向かなかったのでしょう。この塔屋は最初から装飾的な存在に過ぎなかったようで、特に用途はなく、リノベ後は塔屋の下部(地上3階)は倉庫になっているものの、上部は未使用で一般の立ち入りはできません。

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【205】西立面
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【206】南立面
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【207】北立面

竣工時の姿に復旧

ファサード以外の立面については、庁舎時代に増築された棟や駐車場上屋を撤去して竣工時に近い姿に戻りました。その上で階段とエレベーターシャフトを増築し、その部分は鉄骨造のガラス張りとして既存と増築を明確に区別。また、増築部分撤去後の南側は芝生広場にして道路の向かい側に広がる公園と視覚的に連続させ、北側は駐車場、駐輪場にあてています。

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