photo00
教会の見えるチャペルの鐘展望公園 ( 1/2 )
Park with a View of the Chapel
熊本県天草市、梅田正徳 他 、1993(平成5 )年
photo01

【01】
photo02

【02】崎津教会(左下)と十字架のモニュメント(右上)

天草・崎津の歴史

熊本県の西に浮かぶ天草諸島は、1566(永禄9)年にキリスト教が伝来して一時は豊かなキリスト教文化が栄えます。江戸時代初期、島原と天草の民衆が領主の圧政に蜂起した「島原の乱」が失敗に終わり、これが原因でキリシタン弾圧が厳しくなるとともに鎖国が行われますが、長崎や天草などには密かに信仰を続けた人々が大勢いました。
 
明治になって禁令が解かれると、崎津にもヨーロッパから宣教師が赴任してきて多くの隠れキリシタンがカトリックに復帰し、教会が建てられます。現在の崎津教会は、教会建築の第一人者と名高い鉄川与助の設計で1935(昭和10)年に竣工しました。海に面した集落の中心に教会があるという日本では珍しい景観が魅力的です。

photo03

【03】

山頂に建つ十字架のモニュメント

photo20
その崎津の集落を見下ろす山の頂上に、十字架をモチーフにしたモニュメントがあります。山頂は「教会の見えるチャペルの鐘展望公園」というちょっと長い名前の公園に整備され、モニュメントはそのシンボルです。
 
公共事業ではなかなか難しいはずの宗教的なデザインが受け入れられたのは、崎津や天草の歴史性はもちろん、くまもとアートポリスという特例的な事業のおかげなのかも知れません。

キリスト教と神道の共存

崎津教会の記事でも述べていますが、崎津の全員がカトリック教徒というわけではなく、集落には古くから伝わる神社もあります。神社の鳥居越しに教会の尖塔が見える様子は、崎津や天草の歴史を示す象徴的な景観です。さらに、山頂の公園に向かうには神社の中を通り抜けるようになっており、このルート自体もキリスト教と神道の共存関係を表しているといえます。

photo04

【04】

建築的な力強いデザイン

十字架のモニュメントは骨太のフレームを格子状に組んだもので、禁令時代を堪え忍んだ信仰心の強さが感じられるデザインです。また、意外と建築的な印象も受けます。構造は鉄骨造、表面はヒノキ張り。
 
強固なフレームやヒノキを張った現実的な理由は、耐久性や塩害を考慮したためと思われますが、それでも風雨にさらされて損傷が激しかったのか、ネットで最近の写真を見ると、相当数の金物で補強されてちょっと痛々しい姿になってしまっています。

photo22
_
photo23
photo05

【05】

景観から感じる信仰の強さ

photo21
公園からは崎津の教会や集落、そして天草諸島の景観が一望できます。風光明媚といえば聞こえは良いものの、平地が少ない入り組んだ地形はまさに辺境。だからこそ隠れキリシタンが潜伏できたわけですが、二百数十年間も守り続けた信仰の強さに胸を打たれずにはいられません。
名称

教会の見えるチャペルの鐘展望公園

Park with a View of the Chapel

設計者

梅田正徳 / ウメダデザインスタジオ

UMEDA Masanori / Umeda Design Studio

スペースデザイン設計事務所

所在地

熊本県天草市河浦町崎津字村上295

用途

モニュメント、公園

竣工

1993(平成5)年

構造・規模

構造:鉄骨造

モニュメントの高さ:15.48m

交通

車:九州自動車道 松橋IC > 三角港 > 橋を渡って天草を南下 > 河浦町(約2時間30分)

備考

くまもとアートポリス参加事業

左上から大江教会、崎津教会、教会の見えるチャペルの鐘展望公園

リンク

  1. 熊本県くまもとアートポリスくまもとアートポリス参加プロジェクト一覧教会の見えるチャペルの鐘展望公園

参考文献

  1. 『JA』10号 特集:くまもとアートポリス 建築の公共性、新建築社
  2. 『九州・沖縄を歩こう! 建築グルメマップ2[九州・沖縄編]』314頁、エクスナレッジ

公開日:2003年7月20日、最終更新日:2011年7月16日、撮影時期:2002年11月
カメラ:Nikon COOLPIX775(Photoshopで修正)

inserted by FC2 system