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うしぶか海彩館 ( 1/2 )
Ushibuka Fisherman's Wharf
熊本県天草市、内藤廣、1997 (平成9)年
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牛深の位置

天草諸島は熊本県の西に位置し、上島と下島という二つの主な島と中小の島々で構成されます。島と九州本土の間には有明海と八代海が、外海には東シナ海が広がっています。牛深(うしぶか)は下島の南端にある漁港で、以前は牛深市でしたが周辺市町村との広域合併後は天草市牛深町になりました。

建築概要

牛深は天草の主要観光スポットのひとつでもあり、その観光施設として港の岸壁にうしぶか海彩館が建てられました。主な機能は海産物の加工・販売を行う物産館、その他に飲食店、船や漁具の展示場、フェリー乗り場などが入っています。「くまもとアートポリス」参加事業のひとつです。

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【03】

魚市場のような建築

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設計は内藤廣氏。屋根の構造デザインに定評がある内藤氏ですが、海彩館ではトラスの大屋根を架けて、その下に諸室が分散するという設計を行っています。
 
屋根の下をすべて壁で囲むのではなく、吹きさらしの大空間の中に各店舗やフェリー乗り場などが独立しているのです。魚市場のイメージで理解するとよいでしょう。
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牛深ハイヤ大橋との関係

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ところで、海彩館の説明において触れずには済まされないのが 牛深ハイヤ大橋の存在です。これは牛深港を横断する長大な橋で、レンゾ ピアノ氏などが設計しました。写真の通り、海彩館はこの橋の真下にあって、見上げると橋梁が圧倒的なスケールで視界を覆っています。
 
この存在感に建築が立ち向かうのは容易ではなく、建築にとってはかなり厳しい立地条件です。ここで、下手に造形を凝るよりも、トラスというシステマチックな構造に徹した内藤氏の選択は、正解だったと言えるでしょう。
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【05】

内部空間

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屋根の下は店舗等の部分以外は吹きさらしなので、開放的な空間が広がっています。生け簀があるなど正に魚市場のようです。
 
写真05の左上に見えるのは昔の木造漁船を復元したもの。これ以外にも数隻の小船が2階に展示されています。実は海彩館の隣に漁業の歴史資料館のような既存建物があって、そこに収容できない復元船を海彩館側に置いているのですが、惜しいことに空間のスケールに船が負けているように感じました。
 
また、この既存建物のために海彩館から海への眺望が妨げられている点も残念です。
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【06】

実質はペデストリアンデッキ

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2階に上がるとこの建物の構造がよく分かります。建築物というより ペデストリアンデッキと考えた方が正解かも知れません。大まかに言えば、デッキのピロティの一部を壁で囲んで店舗などとして他は吹きさらしのまま、そしてデッキの柱を延長してトラス屋根を支えるという構成です。この土木構造物的なデザイン故に、ハイヤ大橋のスケールに負けることなく存在感を保っています。
 
トラスはスチールと集成材の混構造。ここも見所です。
建物名

うしぶか海彩館

Ushibuka Fisherman's Wharf

設計者

内藤廣 / 内藤廣建築設計事務所

NAITO Hiroshi / Naito Architect & Associates

所在地

熊本県天草市牛深町2286-116

用途

物産館

竣工

1997(平成9)年

構造・規模

構造:鉄筋コンクリート造、プレキャストコンクリート造、鉄骨+集成材混合トラス造

建築面積:3,445m2、延床面積:4,531m2、階数:地上2階

交通

車:九州自動車道 松橋IC > 三角港 > 橋を渡って天草を南下 > 牛深町(約2時間30分)

備考

くまもとアートポリス参加事業

上から、うしぶか海彩館、牛深ハイヤ大橋

参考文献

  1. 『新建築』1997年11月号、新建築社
  2. 『JA』10号 特集:くまもとアートポリス 建築の公共性、新建築社
  3. 『九州・沖縄を歩こう! 建築グルメマップ2[九州・沖縄編]』314頁、エクスナレッジ

リンク

  1. 熊本県 > くまもとアートポリス > くまもとアートポリス参加プロジェクト一覧 > うしぶか海彩館
  2. うしぶか海彩館 公式サイト
  3. 天草宝島観光協会 > 観光情報 > 物産館・市 > うしぶか海彩館・漁業史資料館
  4. さいろ社 > ちょっとした旅 > 牛深
  5. 集落町並みWalker > 探訪 > 遊里を歩く > 全国津々浦々遊里リスト > 熊本 下田牛深

公開日:2003年7月20日、最終更新日:2011年7月9日、撮影時期:2002年11月
カメラ:Nikon COOLPIX775(Photoshopで修正)

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