【02】
辺境の地に建つ白亜の聖堂
明治から昭和初期にかけて鉄川与助 註1 が手掛けた教会の多くは、長崎県の五島や平戸といった辺境の地にあります。彼の教会の分布は、キリスト教の伝来と隠れキリシタンの歴史に重なります。熊本県の天草諸島もそうした背景を持つ地方で、そこがいかに辺境かということを、車で何時間も走り続けて日没寸前にようやく大江教会に到着した私は身に染みて感じました。と同時に、こんなところにこんな立派な教会があるのかと驚かずにいられませんでした。
確かに鉄川の教会建築を訪問するのは容易ではありませんが、辺境の地に長年潜伏した隠れキリシタンの歴史を知るためには、長い時間を掛けて教会を見に行く行為自体が重要なのかも知れません。
【03】
ガルニエ神父の貢献
出津教会を建設したド・ロ神父といい、この時代の宣教師の献身ぶりには本当に頭が下がります。
【04】
建築的な特徴
鉄川は鉄筋コンクリート造教会を3棟設計しており、手取教会(熊本市)・紐差教会(長崎県)に続く3例目 ※2 が大江教会です。いずれも中央に四角形の塔屋を配置して八角形のドーム屋根が載るというデザインは共通していますが、最初の手取に比べるとロンバルディアベルトや横目地が無くなり、ピナクル(小尖塔)のディテールも簡略化されるなど、大江では装飾が少なくなっています。白一色ということもあってけっこうモダンな印象です。
私が訪れた時間が遅く内部には入れなかったものの(いずれにせよ内部撮影禁止なので写真は掲載できない)、資料によると折上天井に花弁模様の装飾が施されているところは手取教会とよく似ています。平面はオーソドックスな三廊式ながら床は畳敷き。ちなみに大江の近くでやはり鉄川の設計による崎津教会も畳敷きであり、カトリックの教会空間に畳敷きという組み合わせが日本的でユニークです。
名称 | 大江教会(大江天主堂とも) Oe Church |
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設計者 | 鉄川与助 TETSUKAWA Yosuke |
所在地 | 熊本県天草市天草町大江1782 |
用途 | 教会 |
竣工 | 1933(昭和8)年 |
構造 | 構造:鉄筋コンクリート造 |
交通 | 車:九州自動車道 松橋IC > 三角港 > 橋を渡って天草を南下 > 天草町(約2時間30分) |
備考 | ここは信仰の場です。見学の際は教会や信者の方々の迷惑とならないよう十分な配慮をお願いします。内部撮影禁止。 |
マーカー左上から大江教会、崎津教会、教会の見えるチャペルの鐘展望公園
補注
参考文献
- 『三沢博昭写真集 大いなる遺産 長崎の教会』三沢博昭、智書房
- 『別冊太陽 日本の教会をたずねて』平凡社
- 『九州・沖縄を歩こう! 建築グルメマップ2[九州・沖縄編]』314頁、エクスナレッジ
リンク
- 長崎の教会 > 福岡教区 > 大江教会
- 長崎県東京事務所 > 大いなる遺産ながさきの教会 > 大江教会
- あじこじ九州 > 熊本県 > 天草エリア > 大江天主堂
- 天草宝島観光協会 > 観光情報 > 歴史 > 天草市天草 大江天主堂
- @nifty デイリーポータルZ > 世界遺産候補の教会めぐり 〜完結編〜
- 旅する長崎学 > 教会巡礼のマナー
- 鉄川与助、フレデリック・ガルニエ ウィキペディア
公開日:2002年12月30日、最終更新日:2011年7月16日、撮影時期:2002年11月
カメラ:Nikon COOLPIX775(Photoshopで修正)