長崎市公会堂00
長崎市公会堂 ( 1/2 )
Nagasaki City Municipal Hall
長崎市、武基雄、1962(昭和37)年、 閉鎖中
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沿革

原爆の惨禍から10年が経った1955(昭和30)年、長崎市に文化施設を整備する長崎国際文化センターという事業がスタートします。長崎市公会堂はそのひとつとして1962(昭和37)年に竣工しました。長崎駅から石橋群で有名な中島川に延びる「桜町通り」という大通りには、市役所・市役所別館・警察署・市民会館といった公共施設が並んでいて、公会堂はその中心に位置します。1998(平成10)年に新たなホール(長崎ブリックホール)が完成するまでは長崎市公会堂が同市のメインホールの役割を担い、長い間市民に親しまれてきました。

概要

建物の構造は鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造。図面上の階数は地上5階ですが、実質的には3階建です。ホールはひとつだけで、座席数は1,922席。

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設計者

公会堂を設計したのは、早稲田大学の教授でもあった建築家の武基雄(たけ もとお)氏。彼は長崎市の生まれで建築だけでなく都市計画にも精通し、広島県呉市の戦災復興計画を担当していました。そのようなキャリアから公会堂の設計者に選ばれたものと思われます。長崎国際文化センター事業の建築群では、長崎水族館(現・長崎総合科学大学シーサイドキャンパス)註1 も彼の設計です。

デザインの特徴

長崎市公会堂は何といってもその力強いデザインが魅力的です。端正な現代建築を見慣れた目には、このような彫りの深い造形がかえって新鮮に映ります。一見奇抜な外観ながら実際のプランニングは合理的で、各方面に2枚ずつ配置した大きな壁が屋根スラブを支え、その下にホールやロビーなどの諸機能が収まっています。
 
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また、大壁で分節した立面ごとにデザインを変えることによって、多様な表情が作られています。そのデザインは鉄筋コンクリート(RC)造の可能性の表現であり、特に両サイドの大胆な片持ちスラブやバルコニーの腰壁などに、RCならではの造形美を見ることができます。
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近年中に解体

長崎市は、建物の老朽化やエレベーターが無いこと、そして代替ホールが完成したことで、以前から公会堂建て替えの是非を検討していました。モダニズム建築としての評価の高さもあって、当面は使い続けることになっていましたが、他方で長崎市庁舎の老朽化問題が浮上。その結果、公会堂を解体してそこに新市庁舎を建設し、現在分散している部署を新庁舎に集約化。さらに、現庁舎の跡地に1,000席程度のホールを建設という計画を長崎市は発表しました 註2 。要するに、市役所と公会堂の位置が入れ替わるわけです。
 
2014(平成26)年6月25日、長崎市議会は翌年3月末で長崎市公会堂を廃止することを賛成31、反対7の賛成多数で可決。ただし、現市庁舎跡地に市がホールを建てる計画は中止し、長崎県の県庁舎跡地に代替施設を建設できるよう、県と協議を行うこととしています。 註3

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【05】鮮やかなタイル貼の壁面が、左右対称なファサードのアクセントになっている。
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【06】ルーバーはコンクリート製から鋼製に変更されている。
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【07】フライタワー(幕や照明を収納する舞台上部の空間)を見上げたところ。
建物名

長崎市公会堂

Nagasaki City Municipal Hall

設計者

武基雄 / 早稲田大学武研究室

TAKE Motoo / Waseda University Take Laboratory

所在地

長崎市魚の町4-30

用途

ホール

竣工

1962(昭和37)年

構造・規模

構造:鉄骨鉄筋コンクリート造、階数:地上5階

敷地面積:3,538m2(広場は含まず)

建築面積:1,981m2、延床面積:5,992m2、座席数:1,922席

交通

鉄道:長崎電気軌道(路面電車)公会堂前電停下車

備考

閉鎖中、外観のみ見学可。近年中に解体の予定。

日本におけるDOCOMOMO150選 No.70

補註

  1. 長崎水族館 住所:長崎市宿町3-16、竣工:1959(昭和34)年。公会堂と同じく、ル コルビュジエを思わせる力強い造形が特徴。水族館が移転した後の2002(平成14)年、日建設計の担当で長崎総合科学大学の校舎にリノベーションされた。
  2. 長崎新聞 2013/1/25付記事、読売新聞 2013/1/26付記事
  3. 長崎新聞 2014/6/26付記事
  4. 筆者は公会堂を何度か訪れたが、いつも施錠されていたので内部は見ていない。

参考文献

  1. 『建築MAP 九州/沖縄』134頁、TOTO出版
  2. 『九州・沖縄を歩こう! 建築グルメマップ2[九州・沖縄編]』114頁、エクスナレッジ
  3. 『現代日本建築家全集5』三一書房

リンク

  1. 長崎市公会堂 公式サイト
  2. 長崎市公会堂長崎国際文化センター武基雄 ウィキペディア
  3. 長崎都市遺産研究会 > 長崎市公会堂 関連資料
  4. 長崎建築データバンク > 長崎市公会堂
  5. 兼松設計 > フォト・・視る > 長崎 > 長崎市公会堂
  6. docomomo japan > 長崎市公会堂 保存・再生要望書
  7. マイベストプロ長崎 > 長崎市公会堂は貴重な建物です。ぜひ存続活用を!そのためにぜひ協力していただきたいこと。
  8. YouTube NBC長崎放送チャンネル > 存続か 廃止か 長崎市公会堂の行方長崎市議会の委員会 市 公会堂廃止を可決

公開日:2010年3月14日、最終更新日:2014年7月5日 閉館が市議会で可決された件とリンク6〜8を追記
撮影時期:2009年12月、2011年7月、カメラ:Nikon D50(Photoshopで修正)

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