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親和銀行大波止支店 ( 1/2 )
Shinwa Bank Ohato Branch
長崎市、白井晟一、1963 (昭和38)年
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【02】

白井らしい小さな名作

親和銀行は長崎県を基盤とする銀行です。白井晟一は長崎県佐世保市の本店、本稿で紹介する長崎市の大波止支店、そして東京支店(現存せず)の3件の設計を手掛けました。本店があまりにも有名なため大波止支店は今ひとつ目立ちませんが、こちらも白井の作風がよく表れており、長崎市を訪れたなら見ておくべき建築です。
 
白井の建築は閉鎖的な立面が多く、銀行も例外ではありません。大きなガラス面を通して内部を見せる一般的な銀行建築に見慣れていると、ここまで閉鎖的な外観の方がむしろ新鮮に感じるほど。基壇の役割を担う階段と回廊状のキャノピーに囲まれた内側に、いわゆる「白井カーブ」と呼ばれる緩やかに湾曲した壁面が立ち上がっています。中央の開口部もピッチの細かい竪格子で覆われて内部は見えず、窓ではなく格子が主役といえるでしょう。松濤美術館(東京都、1980・昭和55年)との類似性が指摘できます。重厚で寡黙な外観はまるで霊廟のようです。

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【03】

回廊状のオープンスペース

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このように閉鎖性を強調すると近寄りがたい建築と思われそうですが、銀行がお客を拒んでは話にならないわけで、設計者もそこは考えています。その配慮がキャノピーに覆われたオープンスペースの存在です。
 
一見すると素っ気ない空間ながら、キャノピーの軒高や前面道路とのレベル差が絶妙で、不思議と落ち着いた領域が生まれています。
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【04】

水面は廃止

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写真03を見て察しが付いた方も多いと思いますが、以前は回廊と壁面の間の窪みには水が張られていました。水面を廃止したのはメンテナンスコスト削減のためでしょう。それは仕方ないとしても無粋な手すりが付けられたのは残念。せめて、砂利を敷き詰めるといった対処をしてほしかったところです。
 
ただ、それ以外では建物は良好な状態を維持しています。開口部が少ないことなど、使い勝手の面では何かと不都合があるでしょうが、白井晟一の建築を使い続ける親和銀行に敬意を表し、後世に残していただきたいと思います。(文中敬称略)
名称

親和銀行大波止支店

Shinwa Bank Ohato Branch

設計者

白井晟一 / 白井晟一研究所

SHIRAI Seiichi / Shirai Seiichi Architectural Institute

所在地

長崎市五島町4-16

用途

銀行

竣工

1963(昭和38)年

構造

鉄筋コンクリート造 + 鉄骨造

交通

鉄道:長崎電気軌道(路面電車)五島町電停下車

リンク

  1. 白井晟一研究所Weblog長崎の親和銀行大波止支店の建築
  2. 兼松設計フォト・・視る長崎親和銀行大波止支店
  3. passerby水飲み場:白井晟一の建築
  4. 白井晟一 ウィキペディア

参考文献

  1. 『建築ガイドブック 西日本編』182頁、新建築社
  2. 『建築グルメマップ2 九州・沖縄を歩こう!』115頁、エクスナレッジ
  3. 『建築MAP九州/沖縄』134頁、TOTO出版

公開日:2012年7月7日、最終更新日:2012年7月7日、撮影時期:2003年7月、2009年12月
カメラ:Nikon COOLPIX775、Nikon D50(Photoshopで修正)

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