【101】3号機「水鳥号」と長崎市のまちなみ
傾斜地が多い長崎市
長崎市は、海岸間際まで山が迫っていて平地が少ない地形です。したがって住宅は急な傾斜地に建てざるを得ず、その中を路地が網の目のように広がっています。観光客の立場なら、変化に富んだ面白いまちなみと思うところですが、実際に住んでいる高齢者や身障者の方々にとっては、必ずしも暮らしやすいとはいえません。しかも、自動車が進入できない狭い路地や急な坂道・階段が多く、徒歩以外に移動手段が無い場所も珍しくありません。
簡易なモノレールを開発
そこで長崎市は、狭い坂道や階段にも設置できるような設備を民間企業と共同で開発しました。その名は「斜面移送システム」。いかにもお役所的な堅苦しい名前のこの設備は、要するに簡易なモノレールと理解すればいいでしょう。このモノレールは2001(平成13)年にまず観光名所のグラバー園に設置され、翌年から2004(平成16)年にかけて市内の3ヶ所に設置されました。グラバー園の後の3基については、天神町の設備が1号機「てんじんくん」、立山町は2号機「さくら号」、水の浦町は3号機「水鳥号」との愛称が付いています。なお、グラバー園のモノレールには番号や愛称はありません。
実際に斜面移送システムの開発と施工を手掛けたのは、アダチ産業・長田工業・嘉穂製作所による研究開発グループです。3社の役割分担の詳細は分かりませんが、嘉穂製作所は小型モノレールといった特殊な移送機器の分野では有力なメーカーであり、長崎市の斜面移送システムでも同社が主導的役割を担ったと思われます。
それぞれの位置
左の地図は、4基の斜面移送システムの位置をプロットしたものです。バルーン型マーカーの上から1号機、2号機、3号機、グラバー園。2ページ以降、この順に述べるとともに、最後のページでは斜行エレベーターについても紹介します。
名称 | 長崎市斜面移送システム Nagasaki City Slope Transportation System |
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設計者 | アダチ産業(Adachi Industry) 長田工業(Nagata Industry) 嘉穂製作所(Kaho Manufacturing) |
所在地 | 上記の一覧を参照 |
用途 | モノレール型昇降機 |
竣工 | 上記の一覧を参照 |
構造 | 鉄骨造 |
交通 | 上記の一覧を参照 |
備考 | 基本的にカードキー所有者と介護者の専用設備 地域や利用者の迷惑にならないよう見学時は十分配慮して下さい |
補註
- 嘉穂(かほ)製作所は福岡県飯塚市に本社を置く建設・機械関係の会社。もともとは炭鉱の機械工作部門の会社だったが、炭鉱閉山後、石炭輸送システムで培った技術を活かして小型モノレールの製作を開始、この分野のトップメーカーになった。
- 小型で簡易なモノレールは、山間部の農地や建設現場での輸送手段として以前から用いられてきた。これはあくまでも産業用だが、バリアフリー概念の普及とともに一般人が乗車可能な小型モノレールが増えている。設置場所は山間部の公園や観光地などだ。
リンク
- @nifty デイリーポータルZ > 坂の町を知る・長崎市の特殊マシーン巡り
- 長崎市 > 長崎市の道路 > 斜面移送システム
- 長崎市 > 長崎市のまちづくり > 斜面地のまちづくり > 住みやすい「さかんまち」長崎の実例
- 嘉穂製作所 > その他製品 懸垂式モノレール
- 斜面移送システム、モノレール、スロープカー ウィキペディア
公開日:2012年10月14日、最終更新日:2012年10月14日、撮影時期:2009年12月
カメラ:Nikon D50(Photoshopで修正)