山田教会01
山田教会 1/2 )
Yamada Church
長崎県平戸市、鉄川与助、1911(明治44)年
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生月島におけるキリスト教の歴史的背景

山田教会のある生月(いきつき)島は長崎県平戸島の北西に浮かぶ小さな島で、平戸島とは生月大橋で結ばれており、陸路で行ける範囲としては平戸島とともに日本のほぼ最西端に位置します。
 
生月島は「カクレキリシタン」の人々が多い地域として有名で、時代が過ぎるにつれてこの独特な信仰が途絶えつつある中、島では現在もかろうじて信者組織が維持されています。
 
「カクレキリシタン」とは明治以降も潜伏時代の信仰形態を続ける人々のことです。キリスト教が禁じられていた江戸時代、西洋との交流が途絶した中で「隠れキリシタン」として秘密裏に信仰を続けるうちに、キリスト教の儀式や教義は変容してしまいます。明治になって禁教が解かれると、ほとんどの信者は外国人宣教師の指導で本来のキリスト教に復帰しますが、一部は復帰を拒んで変容した信仰を守り続けました。この人々のことを、江戸時代の潜伏信者と区別するためにカタカナで「カクレキリシタン」と表します。

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比較的地味な外観

もっとも、「カクレキリシタン」が多かったといってもカトリックに復帰する信者が生月島にいなかったわけではありません。山田教会は復帰信者のためのカトリック教会として、生月島南部の集落の中に鉄川与助の設計で建てられました。構造は壁がレンガ造で屋根と内部の柱は木造。ファサード(正面)は竣工当時は木造でしたが、昭和40年代の増改築で鉄筋コンクリート造になっています。
 
山田教会の外観は、形がシンプルな上にしっくい仕上げで全体的に白いためか、よく言えばモダンな、言い換えれば地味な印象を受けます。建築物としてはレンガを見せるよりしっくい仕上げの方が本来は上等なデザインなのですが、同じ平戸市内にある田平教会のレンガを巧みに積み上げた外観と比べると、率直に言って見劣りする感は否めません。

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木造リブ ヴォールトが巧みな内部

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しかし、その印象は内部に入ると一変します。元来、石やレンガを積み上げて築く工法であるアーチ/ヴォールトを木造で再現するという独特な空間が広がっているのです。
 
田平教会などにも同タイプの空間は見られますが、田平教会の内部が白く塗装されているのに対して、木目が見える山田教会はより直接的に木造ヴォールト空間の面白さを体感することができます。
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装飾画の驚くべき材料

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内部でさらに注目すべきは壁面の装飾です。主に円形の紋様がちりばめられた幻想的な作品で、たいへん独特な色合いをしていますが、なんとこれは 蝶の羽を切り絵のように貼って描いているというのですから、驚くというか圧倒されてしまいます。
 
ウィキペディアによると、1990年頃に教会の主任司祭が自ら製作したとのこと。それにしても一体、何匹の蝶を使っているのでしょうか。
建物名

山田教会

Yamada Church

設計者

鉄川与助

TETSUKAWA Yosuke

所在地

長崎県平戸市生月町山田免442

用途

教会(宗派はカトリック)

竣工

1911(明治44)年

ネット上には1912年竣工との記述も見られるが、本稿は『日本近代建築総覧』などから1911年竣工とした。

構造・規模

構造:レンガ造・木造、一部鉄筋コンクリート造

交通

車:生月大橋 > 県道42号線 > 集落に入る、駐車場あり

備考

ここは信仰の場です。見学の際は教会や信者の方々の迷惑とならないよう十分な配慮をお願いします。筆者は教会の方に内部の見学・撮影の許可をいただきましたが、現在も許可が得られるとは限りません。必ず教会の方に確認の上、その指示に従ってください。

補注

  1. 鉄川与助について詳しくはこちらの記事を参照のこと。

参考文献

  1. 『九州・沖縄を歩こう! 建築グルメマップ2[九州・沖縄編]』346頁、エクスナレッジ
  2. 『三沢博昭写真集 大いなる遺産 長崎の教会』(三沢博昭、発行 智書房、発売 青雲社)

リンク

  1. 山田教会鉄川与助隠れキリシタン ウィキペディア
  2. 長崎県東京事務所 > 大いなる遺産ながさきの教会 > 山田教会
  3. 平戸観光協会 達人Navi平戸 > 平戸キリシタン紀行 > 山田教会
  4. 長崎の教会 > 平戸・北松地区 山田教会
  5. 旅する長崎学 > 教会巡礼のマナー

公開日:2011年1月29日、最終更新日:2011年1月29日、撮影時期:2005年9月
カメラ:Nikon D50(Photoshopで修正)

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