【02】
3つのホールを有する市民会館
新潟市民芸術文化会館(愛称りゅーとぴあ)はその名の通り新潟市の市民会館で、コンサートホール(1900席)、劇場(900席)、能楽堂(380席)という3つのホールを1つの建物に内包しています。既存施設の老朽化や狭小化に伴い新たに建設され、1998年に竣工しました。設計者はコンペで選ばれた長谷川逸子氏です。
市民会館は信濃川沿いに建ち、近隣には新潟市音楽文化会館、新潟県民会館、新潟市体育館といった既存施設があって一帯は文化ゾーンを形成しています。これらの施設群は市民会館と合わせて建設されたブリッジで結ばれており、このブリッジの存在も設計上の大きなポイントです。
【03】
シンプルな形状
外壁はほぼ全面的にダブルスキンのガラスで覆われ、その二重皮膜の中に長谷川氏のトレードマークといえるパンチングを施したアルミスクリーンが仕込まれています。
【04】
軽やかな内部空間
例えば、重要な見せ所である大空間を支える柱を無装飾の円柱にしている点や、仮設的または装置的なデザインがなされたティールーム(右上の写真)などに、その特徴が見て取れます。
【05】
ロビーの巨大な鏡
そもそもこのロビーは3つのホールや練習室、ギャラリーなど市民会館の全利用者のコミュニケーション空間になることが意図されており、人々の姿が鏡に映ることで設計意図を表現しています。
【06】
屋上庭園
市民会館が建設された1990年代後半は、建築の緑化や環境対策が本格化し始めた時期で、この屋上庭園は当時としてはかなり大規模な事例です。また、これまでの大空間建築は屋根の形状・構造の表現が見所でしたが、長谷川氏が今回の設計ではそこを重視していない点も大きな特徴といえます。
【07】
空中庭園
通路と公園をわざわざ持ち上げたのは、地上レベルの大半を駐車場が占めているため。地下駐車場にしなかったのは地下水位が高くてできないからです。
【08】空中庭園・ブリッジと新潟市体育館
アイランド・ホッピング
長谷川氏は、浮島が点在していた信濃川河口の昔の景観をヒントに、市民会館をはじめとする諸施設や空中庭園を浮島に見立てて全体を計画し、人々がブリッジを通って各地点を行き交い、活動する様子を「アイランド・ホッピング」という概念で説明しています。上部を緑化した楕円形の市民会館や空中庭園は、浮島をイメージしているわけです。
ただ、筆者が見た限り空中庭園が閑散としていたのは、単純に冬で寒かったからかも知れませんが、分散した空中庭園を市民が上手く使いこなすことができるかどうかは、少々疑問に感じました。
名称 | 新潟市民芸術文化会館りゅーとぴあ Niigata-City Performing Arts Center Ryutopia |
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設計 | 長谷川逸子 / 長谷川逸子・建築計画工房 HASEGAWA Itsuko / ITSUKO HASEGAWA ATELIER |
所在地 | 新潟市一番堀通町3-2 |
用途 | ホール |
竣工 | 1998(平成10)年 |
構造・規模 | 構造:鉄骨鉄筋コンクリート造、階数:地上6階 建築面積:10,062.4m2、延床面積:25,099.3m2 |
交通 | 鉄道:JR越後線 白山駅下車 徒歩十数分 |
参考文献
- 『新建築』1999年1月号、新建築社
リンク
- りゅーとぴあ 公式サイト
- 新潟市民芸術文化会館 ウィキペディア
- 東西アスファルト事業協同組合 > 私の建築手法 1998 長谷川逸子 公共建築と都市
公開日:2004年12月28日、最終更新日:2012年3月11日、撮影時期:2003年10月
カメラ:Nikon COOLPIX775(Photoshopで修正)