概要
別府市児童館 註1 は、もともと別府郵便電話局電話分室として1928(昭和3)年に竣工しました。戦後も引き続き電話局として使われ、1964(昭和39)年の電話局移転に伴い別府市が買収します。その後は庁舎別館や水道局分室などに使われた後、1991(平成3)年の改修工事によって「レンガホール」という一般市民向けの公共施設に再生され、1996(平成8)年に児童館となって現在に至ります。
設計したのは逓信省営繕課の吉田鉄郎 註2。逓信省とは戦前の郵便・通信行政に関する監督官庁で、その営繕課は各地の郵便局や電話局などを設計しました。官庁建築の中でも“逓信建築”は独特な存在であり、戦前における建築デザインの先端を突き進んでいたといえます。
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表現主義からモダニズムへ
名称 | 別府市児童館(別府市南部児童館) Beppu City Children's Center |
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旧名称 | 別府郵便電話局電話分室 Beppu Post Office Telephone Department |
設計者 | 吉田 鉄郎 / 逓信省営繕課 YOSHIDA Tetsuro / Ministry of Communications Design Section |
所在地 | 大分県別府市末広町1-3 |
用途 | 当初:電話局、現在:児童館 |
竣工 | 1928(昭和3)年 |
構造・規模 | 構造:鉄筋コンクリート造、階数:地上2階 塔屋1階 建築面積:649m2、延床面積:未確認 |
交通 | 鉄道:別府駅下車 徒歩約20分 |
備考 | 登録有形文化財 |
左から別府市中央公民館、別府市児童館
補註
- 施設の公式サイトによると「別府市南部児童館」が正式名称なのだが、建築関係の書籍やウェブサイトは「別府市児童館」との記述がほとんどを占めている。よって、検索のヒット率を考慮して本稿も「南部」抜きの名称を用いた。
- 吉田 鉄郎(よしだ てつろう)。1894〜1956(明治27〜昭和31)年。富山県出身。東京帝国大学建築学科を1919(大正8)年に卒業後、逓信省に入省し、山田守らとともに同省関連施設(いわゆる逓信建築)の設計を通じて戦前の建築デザインをリードした。代表作に東京中央郵便局や大阪中央郵便局などがある。
- 大分市府内町にあるNTT大分支店別館も、表現主義からモダニズムへの移行過程が見られる逓信建築だ。ただ、吉田鉄郎が関与したかどうかは分からない。竣工は1927(昭和2)年と思われる。この建築は筆者の個人サイトで紹介している。
リンク
公開日:2013年12月14日、最終更新日:2013年12月14日、撮影時期:2007年4月
カメラ:Nikon D50(Photoshopで修正)