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別府市児童館 / 旧別府郵便電話局電話分室 ( 1/2 )
Beppu City Children's Center / Beppu Post Office Telephone Department
吉田鉄郎、大分県別府市、1928(昭和3)年
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概要

別府市児童館 註1 は、もともと別府郵便電話局電話分室として1928(昭和3)年に竣工しました。戦後も引き続き電話局として使われ、1964(昭和39)年の電話局移転に伴い別府市が買収します。その後は庁舎別館や水道局分室などに使われた後、1991(平成3)年の改修工事によって「レンガホール」という一般市民向けの公共施設に再生され、1996(平成8)年に児童館となって現在に至ります。
 
設計したのは逓信省営繕課の吉田鉄郎 註2。逓信省とは戦前の郵便・通信行政に関する監督官庁で、その営繕課は各地の郵便局や電話局などを設計しました。官庁建築の中でも“逓信建築”は独特な存在であり、戦前における建築デザインの先端を突き進んでいたといえます。

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表現主義からモダニズムへ

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外観を見る限り構造はレンガ造に思えますが、実際は鉄筋コンクリート造にレンガタイルを貼ったものです。階数は地上2階建て、全体的な形はコの字型。敷地は角地で、二方向の道路沿いに壁が立ち上がっています。外壁の凹凸や開口部による垂直性の強調、出入口のアーチ、玄関上部の装飾的なバルコニー、レンガタイルの使用といった部分に表現主義が感じられるものの、おおむね抑制的なデザインです。吉田の設計で同じ年に竣工した 別府市公会堂(現・別府市中央公民館)の方が表現主義色が強いことと考え合わせると、吉田鉄郎/逓信省営繕課が表現主義からモダニズムに移行する過程であったことが読み取れます。
名称

別府市児童館(別府市南部児童館)

Beppu City Children's Center

旧名称

別府郵便電話局電話分室

Beppu Post Office Telephone Department

設計者

吉田 鉄郎 / 逓信省営繕課

YOSHIDA Tetsuro / Ministry of Communications Design Section

所在地

大分県別府市末広町1-3

用途

当初:電話局、現在:児童館

竣工

1928(昭和3)年

構造・規模

構造:鉄筋コンクリート造、階数:地上2階 塔屋1階

建築面積:649m2、延床面積:未確認

交通

鉄道:別府駅下車 徒歩約20分

備考

登録有形文化財

左から別府市中央公民館、別府市児童館

補註

  1. 施設の公式サイトによると「別府市南部児童館」が正式名称なのだが、建築関係の書籍やウェブサイトは「別府市児童館」との記述がほとんどを占めている。よって、検索のヒット率を考慮して本稿も「南部」抜きの名称を用いた。
  2. 吉田 鉄郎(よしだ てつろう)。1894〜1956(明治27〜昭和31)年。富山県出身。東京帝国大学建築学科を1919(大正8)年に卒業後、逓信省に入省し、山田守らとともに同省関連施設(いわゆる逓信建築)の設計を通じて戦前の建築デザインをリードした。代表作に東京中央郵便局や大阪中央郵便局などがある。
  3. 大分市府内町にあるNTT大分支店別館も、表現主義からモダニズムへの移行過程が見られる逓信建築だ。ただ、吉田鉄郎が関与したかどうかは分からない。竣工は1927(昭和2)年と思われる。この建築は筆者の個人サイトで紹介している。

リンク

  1. 別府市 > 別府市南部児童館
  2. ITOデザイン事務所 > 別府の近代建築遺産 > 別府市児童館(旧レンガホール)
  3. 電話局写真館 > 逓信省建築局地図 > 旧逓信省別府電報電話局
  4. レトロな建物を訪ねて > 別府市児童館
  5. 文化遺産オンライン > 別府市児童館(旧別府郵便電話局電話分室)

公開日:2013年12月14日、最終更新日:2013年12月14日、撮影時期:2007年4月
カメラ:Nikon D50(Photoshopで修正)

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