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豊後森機関庫 ( 1/2 )
Bungomori Roundhouse
大分県玖珠町、1934 (昭和9)年
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【01】
《 はじめに 》

豊後森機関庫の周辺は「豊後森機関庫ミュージアム」として整備され、2015(平成27)年11月にオープンしました。ただし、本稿はそれ以前の執筆であり情報が古いことを予めご了承ください。

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【02】

珍しい扇形機関庫の遺構

大分県玖珠(くす)町の豊後森(ぶんごもり)駅は、久留米駅(福岡県)と大分駅をむすぶ久大本線の駅です。その構内に今では珍しい扇形の機関庫(扇形庫)が廃墟状態で残っています。
 
電気・ディーゼル機関車と異なり、前後の区別がある蒸気機関車は方向転換に転車台という設備を必要とします。機関車を収容する機関庫を転車台を中心に扇形にすれば効率的なので、蒸気機関車の時代には各地に扇形庫が建設されました。
 
蒸気機関車の廃止後は扇形庫も次第に解体され、国内にはもはや数カ所しか残っていません。また、現存する扇形庫はだいたい現役で使われており、豊後森機関庫のように廃墟のまま解体されずに残っているのはかなり珍しい事例です。

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【03】

沿革

豊後森駅の開業は1929(昭和4)年。扇形庫が竣工したのは1934(昭和9)年で、1970(昭和45)年に廃止されました。

神殿のようなファサード

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扇形庫の建築的な魅力といえば、名前の通り扇形に広がるファサードです。純粋に機能的な理由で設計された形でありながら、円柱が並ぶ立面が古典的な神殿を連想させるところが面白い。さすがに エンタシスはありませんが。
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【04】この写真のみ別の時期に撮影。転車台と扇形庫の関係がよく分かる。
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【05】

転車台

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転車台は、レールと枕木は残っていないものの、桁や操作室、円形ピットといった主な構成要素は現存しており、多数の蒸気機関車が出入りしていた全盛期の姿が目に浮かぶようです。
 
桁の側面には「鐵道省」「昭和九年」等と記された銘板が付いていることから、この転車台装置は機関庫竣工当時のものであると分かります。
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【06】

内部からの眺め

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扇形庫の内部から外を見た光景もなかなかユニークで、転車台を中心とする放射状の平面計画が見て取れます。床に見える帯状の土の部分は、機関車点検用のピットを埋め戻したものと思われます。
 
外に広がる山並みを見ると、豊後森駅に機関区(車両基地)が設置されたことが少々意外に感じますが、久大本線のほぼ中間に位置することや、蒸気機関車に欠かせない水が確保できることなどの理由から、同駅が選ばれたとのことです。
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【07】

煤だらけの天井

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いちおう排煙フードはあるものの、天井は蒸気機関車の煤で真っ黒に汚れていて機関庫の歴史を感じさせます。私が訪れた2005年当時、内部は倉庫というかガラクタ置き場といった雰囲気でした。その後もたいして変わっていないはずです。

保存と活用の計画

長らく放置されてきた豊後森機関庫ですが、地元有志の保存活動によってその価値が見直されるようになりました。2006(平成18)年には玖珠町がJR九州から扇形庫と敷地を買い取り、将来は公園に整備する計画を立てています。

名称

豊後森機関庫

Bungomori Roundhouse

設計者

不詳

所在地

大分県玖珠郡玖珠町大字帆足415

用途

鉄道施設(機関庫)

竣工

1934(昭和9)年

構造・規模

構造:鉄筋コンクリート造、建築面積:1,785m2

交通

鉄道:九大本線 豊後森駅下車

車:大分自動車道 玖珠IC下りる

備考

現在は「豊後森機関庫ミュージアム」として再整備。


補註

  1. 筆者は確認できなかったが、太平洋戦争中に米軍機の機銃掃射を受けた跡が壁面に残っている。
  2. 国内に現存する最も有名な扇形庫といえば梅小路蒸気機関車館(京都市)である。他には津山駅(岡山県)、米子駅(鳥取県)などに残っている。

参考文献

  1. 『九州遺産 近現代遺産編101』砂田光紀、弦書房
  2. 『豊後森機関庫現地調査報告書』豊後森機関庫現地調査実行委員会

リンク

  1. 豊後森機関庫保存委員会
  2. 九州ヘリテージ調査報告書一覧旧国鉄 豊後森機関庫 No.1
  3. NHK映像マップ みちしる 新日本風土記アーカイブス豊後森駅 ふるさとの誇りを伝え続ける駅舎
  4. 豊後森機関庫扇形庫 ウィキペディア
  5. 玖珠町 > 豊後森機関庫ミュージアム

公開日:2002年12月9日、最終更新日:2011年8月7日、撮影時期:2005年8月(一部 2002年10月)
カメラ:Nikon D50、一部 Nikon COOLPIX775(Photoshopで修正)

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