【02】
日本で最も美しいダム
【03】
堰堤の目的
大分県竹田市周辺は、明治・大正時代に石造水路橋や隧道(ずいどう)註2 が建設されるなど、昔から農業用水の確保のために積極的な土木事業が行われてきた地域です。白水堰堤も同じく農業用水の安定確保が目的で、昭和9年から4年がかりで建設されました。
水のカーテン
設計者の小野安夫は大分県の山村に生まれて県の農業土木技師となりました。要するに地方自治体の一技術者ですが、「用・強・美」が揃った白水堰堤の完成度は彼の才能の高さを物語っています。何といっても見る者を感嘆させるのが堤体(堰堤本体のこと)をなだらかに滑り落ちる水の流れ。まるでレースのカーテンのような水幕が石積みの表面を流れる様子は、いつまで見ても飽きません。
【04】
高度な石造技術
堤体の左右の形状もユニークです。向かって右側(写真03)は堤体が次第に階段状に変化、左側(写真04〜05)は複雑な3次曲面を描いています。これらの形状は水流の勢いを弱めてコントロールする工夫とのこと。また、石積みでこの優雅な造形を実現できた背景には、高度な技術を有する石工集団の存在がありました。
街の中で注目される建築物と異なり、必要不可欠なインフラでありながらほとんど人目に付くことのない土木構造物。昭和のはじめに造られたその美しい堰堤は、これからも山中で農業用水確保の役割を黙々と担い続けることでしょう。
【05】
見学時の注意
以下、見学時の注意事項をいくつか述べておきます。整備された観光地ではないことを認識して自己責任で行動して下さい。
- 白水堰堤に通じる道は細くて見通しが悪いところがあるので、対向車に気を付けて下さい。
- 雨量によって水の流れは変化するので、水が流れていなかったり逆に増水していることがあります。増水時は水辺に近付かない方が無難です。
- 堤体左側(下記リンク先では右岸・Bコース)から川辺に下りる階段はかなり急です。滑りにくく歩きやすい靴で行動して下さい。
- 午後は逆光になります。ベストショットを撮るなら午前中(できれば早朝)に現地入りを。ちなみにこのページの写真はすべて逆光です。
建物名 | 白水溜池堰堤 Hakusui Reservoir Dam |
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設計者 | 小野 安夫 / 大分県 ONO Yasuo / Oita |
所在地 | 大分県竹田市大字次倉 |
用途 | ダム |
竣工 | 1938(昭和13)年 |
構造・規模 | 構造:重力式割石コンクリートダム 規模:高さ14.1m、長さ87.26m |
交通 | 交通手段は車のみ。ルートは竹田市観光ツーリズム協会のサイト(リンク1)を参照のこと。 |
備考 | 国指定重要文化財、土木学会指定Aランク近代土木遺産 |
補註
- 正式名称は白水溜池堰堤だが、白水堰堤や白水ダムと呼ばれることが多いようだ。河川法では高さ15m以上をダムと規定しており、それに満たないこの堰堤を白水ダムと呼ぶのは必ずしも正確ではないものの、通称として定着している。
- トンネルのこと。この地域には井路(いろ)と呼ばれる水路が何本も張り巡らされており、総延長は100kmを超える。白水堰堤は富士緒井路の溜池である。
参考文献
- 『九州遺産 近現代遺産編101』砂田光紀、弦書房
リンク
- 竹田市観光ツーリズム協会 タケタン > 特集 彩 > 荻エリア 白水堰堤への詳しいルートガイドが載っている。ガイドに記されているように、川の左岸(Aコース)・右岸(Bコース)のどちらからアプローチするかによって見学にはそれぞれメリット・デメリットがある。水量が少なければ歩いて対岸に渡ることができるが、増水時は無理しないこと。時間に余裕があれば車で迂回すればよい。
- NIKKEI Adnet > 日本の近代遺産50選 > 48 白水溜池堰堤水利施設
- 水土の礎 > 水土の巧 > 大分県:大野川水系 > 富士緒井路の白水ダム
- 財団法人 日本ダム協会 > ダム便覧 > テーマページ目次 > ダム関連書籍 ダムの書誌あれこれ(14) > 日本一美しいダム~白水ダム
- 白水溜池堰堤 ウィキペディア
公開日:2009年10月24日、最終更新日:2012年6月23日 スライドショーの追加等、撮影時期:2005年10・11月
カメラ:Nikon D50(Photoshopで修正)