【10】
中庭と炉前ホール
外界から隔絶したコンクリート打放しのモノトーンの世界で、自然を感じさせる水と光の存在が、死者が天に召されていくことを遺族に語りかけます。 註1
【11】
エントランスポーチ
動線計画的には、到着した棺は写真左の扉から入って告別室を経由して炉前ホールに向かい、火葬が終わると収骨室で遺族が遺骨を骨壺に収めて右の扉から出てきます。モノトーンの空間に配置した象徴的な柱とトップライトによって、死者が天に召されるイメージを表現しています。
【12】
【13】
生と死の世界を往来
車寄せから前庭を見た前頁の【04】に対して、エントランスポーチから前庭を見た様子が写真12〜13です。前頁でも述べたように、遺族の意識を葬送に向ける仕掛けとして前庭の回廊はスロープになっています。
緑豊かな前庭や公園とモノトーンの火葬棟との対比や、スロープを付けるためのレベル差は、明らかに生と死の世界を区別しています。収骨を終えてスロープを上って帰路に就くとき、遺族は日常の世界に還ることを意識するでしょう。
名称 | 風の丘葬斎場 Kaze-no-Oka Crematorium |
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設計者 | 槇文彦 / 槇総合計画事務所 MAKI Fumihiko / Maki and Associates |
ランドスケープデザイン | ササキ エンバイロメント デザイン オフィス |
所在地 | 大分県中津市大字相原3032-16 |
用途 | 火葬場、葬斎場 |
竣工 | 1997(平成9)年 |
構造・規模 | 構造:鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造 建築面積:2,514.50m2、延床面積:2,259.88m2、階数:地上2階 |
交通 | 車:国道10号線 > 国道212号線 |
備考 | 見学の際は葬儀参列者の迷惑にならないようご注意ください。本稿の写真は施設管理者の許可を得て撮影しています。 1998年建築業協会賞(BCS賞)、1998年村野藤吾賞 2002年公共建築賞優秀賞 2003年グッドデザイン賞金賞(ランドスケープデザインに対して) |
補注
- 掲載写真が歪曲して見えるのはレンズ収差やパノラマ合成の影響。画像編集ソフトを使っても完全には補正できなかった。たいていの建築写真ではほとんど気にならないが槇文彦氏の建築はごまかしが効かない。
- 風の丘葬「祭」場と記載するウェブサイト・ブログが多いが正しくは葬「斎」場である。
- 筆者は見落としてしまったが中津市の図書館も槙氏が設計している。
参考文献
- 『新建築』1997年7月号、新建築社
- 『日経アーキテクチュア』2002年11月11日号
- 『建築グルメマップ2 九州・沖縄を歩こう!』281頁、エクスナレッジ
- 『建築MAP 九州/沖縄』179頁、TOTO出版
リンク
- 風の丘葬斎場 公式サイト
- MAKI AND ASSOCIATES 槙総合計画事務所 > Projects > 風の丘葬斎場
- 風の丘葬斎場 ウィキペディア
公開日:2004年12月5日、最終更新日:2011年8月7日、撮影時期:2002年10月
カメラ:Nikon COOLPIX775(Photoshopで修正)