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大分市情報学習センター 1/2 )
Oita Multimedia Center
磯崎新、大分市、1979(昭和54)年
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建物の概要と設計者

大分市情報学習センターは大分市が運営する市民向けの学習・研修施設です。コンピューター研修室や映像スタジオ・AVホールなどがあって、パソコン教室などの市民講座や映画上映といったサービスを提供しています。
 
設計は大分出身の世界的建築家 磯崎新氏。大分県内にある彼が設計した建物のうち、1970年代の初期作の何件かは解体されていますが、この情報学習センターは竣工当時とほとんど変わらない状態が維持されていると思われます。なお、昔の作品集や資料には竣工当時の名称である大分市視聴覚センターという名前で載っているのでご注意ください。

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外観を特徴づける階段

情報学習センターの前に立ってまず目に止まるのが、立面に左右対称に付いた屋外階段と、2階まで延びる長いスロープです。階段の方は(平面図によると)あくまでも避難用であって普段の出入りには使わないようですが、そのような階段でもかっこよく見せるやり方が上手い。ポストモダンの旗手である磯崎氏のことですからおそらくこの階段はヨーロッパの昔の建築か何かからの引用だろうと推測します(元ネタは不明)。

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スロープとフォリー

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もう一方の長大なスロープがこの建物のメインアプローチで、訪問者は直接2階へアクセスします。スロープの先端にある円筒形部分は、給水塔か穀物サイロを思わせる素っ気ない形と仕上げで、プロポーションもちょっとアンバランスな気がしますが、これは何か意図があってのことでしょう。庭園デザインにおけるフォリーのようなものでしょうか。外観に反して円筒形の内部は黄色に塗装された明るい雰囲気。この内外のイメージの差は建物本体も同様です。
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磯崎建築のデザインボキャブラリー

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写真05は2階のエントランス。アプローチ側の立面からは分かりにくいのですが、屋根には2本のヴォールト(カマボコ形)とその間にトップライトがあります。ヴォールトは初期の磯崎氏がよく用いた形状で 北九州市立中央図書館(福岡県、1974)が代表例です。
 
また、現代建築に詳しい人なら曲面を描く壁にピンと来るでしょう。右上の写真がその内側。マリリン モンローの脚線美をモチーフにしたという磯崎氏お馴染みのモンローカーブですね。
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内部空間

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平面計画は建物の中心に廊下・階段を、その周りに諸室を配置した中廊下型。1・2階の廊下をずらして生じた吹き抜けは空間的には小規模にも関わらず、白と黄色のカラーリング、コンクリートの列柱、トップライトが作る光と影によって、現代的でありながら古典建築にも通じる静謐さを感じさせます(写真06)。
 
このように、小規模な建物だからこそ初期の磯崎氏の作風を身近に感じられる大分市情報学習センターに、磯崎巡りで大分を訪れる際はぜひ立ち寄ることをお薦めします。
 
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付け加えると、館内には磯崎建築の模型を展示する「ミニ ムセオ 磯崎」という展示スペースがあって、壁面には直筆サインが残されています。
名称

大分市情報学習センター

Oita Multimedia Center

旧名称

大分市視聴覚センター

設計者

磯崎 新 / 磯崎新アトリエ

ISOZAKI Arata / Arata Isozaki & Associates

所在地

大分市大石町1-1-3

用途

文化施設

竣工

1979(昭和54)年

構造・規模

構造:鉄筋コンクリート造、階数:地上2階

建築面積:未確認、延床面積:2,164m2

交通

鉄道:南大分駅下車、徒歩8分

バス:大石町1丁目下車、徒歩2分

参考文献

  1. 『建築MAP 九州/沖縄』168頁、TOTO出版
  2. 『九州・沖縄を歩こう! 建築グルメマップ2 九州・沖縄編』280頁、宮本和義 + 建築知識編集部、エクスナレッジ

リンク

  1. 大分市情報学習センター 公式サイト
  2. 大分市情報学習センター ウィキペディア

公開日:2009年9月23日、最終更新日:2012年6月28日 写真を修整し、スライドショーを追加、撮影時期:2007年4月
カメラ:Nikon D50(Photoshopで修正)

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