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大阪ガス実験集合住宅NEXT21 ( 1/2 )
Osaka Gas Experimental Housing NEXT21
大阪市、大阪ガスNEXT21建設委員会、 1993(平成5)年
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実際に生活しながら検証する実験住宅

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大阪ガス実験集合住宅NEXT21とは、先進的な構造・設備・平面計画を導入した集合住宅を建設し、そこに複数の家族が実際に生活しながら技術の検証を行うという、その名の通り実験的なプロジェクトです。
 
プロトタイプ的な集合住宅はかつて日本住宅公団(現UR)も建設した例がありますが、そこで一般人が生活することを考慮するとあまり先進的な設計はできません。一方、NEXT21は大阪ガスの社宅であり、これが実験住宅だと了解の上で入居する人ばかりなので、設計者はより自由なデザインが可能でした。
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NEXT21の特徴

NEXT21の主な特徴としては(1)スケルトン インフィル (2)多様な住戸プラン (3)立体街路 (4)環境共生、が挙げられます。

スケルトン インフィル

スケルトン インフィル(SI)とは、柱・梁といった構造に関わる躯体部分(スケルトン)と、住戸の壁や内装、設備といった非構造部分(インフィル)とを区別して、躯体を傷つけずに住戸の改修や設備の更新が行える設計をいいます。
 
SI自体は高耐久・長寿命を謳った建築によく採用されていますが、NEXT21の場合、水回りを自由に配置できるよう十分な配管スペースを確保するなど、住戸設計の自由度を高める工夫がなされています。

多様な住戸プラン

全18戸の平面は全て異なり、1戸ずつ躯体とは別の設計者がこれからの家族像を想定して設計しました。住戸のリフォームは従来のマンションよりも容易で外壁の変更すら可能です。NEXT21用に開発された外壁は、位置を変更しても使い回しができるように規格化されています。恒久的なスケルトンと可変的なインフィルの関係は立面によく現れており、鉄筋コンクリートのフレームの中に住戸の壁や窓が自由に配置されている様子が一目瞭然です。

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立体街路

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凹凸が多いので複雑な形状に思えますが、大枠としてはNEXT21はコの字型の住棟です。コの字の内側に共用廊下を巡らせたプランを基本として、各住戸にアクセスする廊下を路地状に延ばしたり、コの字の両翼にブリッジを架けることで、立体的な共用空間が生まれています。NEXT21ではこれを立体街路と呼んでいます。

しかし、わずか18戸の集合住宅にこれ程の共用スペースというのは、実験住宅でかつ社宅だから実現したのであって、普通の民間マンションでの採用は難しいでしょう。立体街路が真価を発揮するのは、かつてメタボリズムの建築家達 註1 やバブル時代の大手ゼネコンが提案したような巨大構造物(メガストラクチャー)でこそだと思います。

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環境共生

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環境共生には設備設計と建築緑化の二分野の話がありますが、設備については外観を見ただけでは分からないので本稿では触れません。詳しく知りたい方は他サイトや関連図書などをお読みください。
 
緑化は屋上庭園や中庭をはじめ建物の随所に合計1000m2も施され、植物が成長した現在は小山のような様相を呈しています。コンクリートのフレームに緑が生い茂った外観には、確かに「環境共生」の実践例としての説得力があります。
 
植物がここまで成長すると、落ち葉の処理や虫の発生といった都会暮らしに慣れた住民にはやっかいな問題が発生します。そこで、プロジェクトの第二段階では入居条件に緑地の管理を入れてメンテナンスの在り方を模索しています。このように規約を柔軟に変更できるところは、実験住宅というか社宅ならではの利点でしょう。
名称

大阪ガス実験集合住宅NEXT21

Osaka Gas Experimental Housing NEXT21

設計

大阪ガスNEXT21建設委員会

NEXT21 Committee for the Osaka Gas NEXT21 Project

委員長:内田祥哉、副委員長:巽和夫

総括:内田祥哉+集工舎建築都市デザイン研究所

住戸:大阪ガス、シーラカンス、ヘキサ、住宅都市整理公団(現UR)他

所在地

大阪市天王寺区清水谷町

用途

集合住宅

竣工

1993(平成5)年

構造・規模

構造:鉄骨鉄筋コンクリート造+鉄筋コンクリート造+プレキャストコンクリート造、階数:地下1階 地上6階

建築面積:896.2m2、延床面積:4,577.2m2

交通

鉄道:地下鉄谷町線または長堀鶴見緑地線 谷町六丁目駅下車 徒歩5分

備考

見学・撮影の際は住民のプライバシーに配慮してください。内部立ち入り禁止。


補註

  1. メタボリズム建築は将来の変化・成長に対応できるものとして設計されたが、理念が先行しすぎたせいか、実際にその趣旨に添った増改築が行われた例はほとんどなかった。SIが成功するかどうかも数十年後に問われることになる。

公開日:2003年12月21日、最終更新日:2013年8月14日 文章を若干修正、撮影時期:2003年9月
カメラ:Nikon COOLPIX775(Photoshopで修正)

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