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佐賀県立博物館 ( 1/2 )
Saga Prefectural Museum
高橋てい一 / 第一工房 + 内田祥哉、佐賀市、1970(昭和45)年
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佐賀市のふたつの現代建築

かつて佐賀城があったエリアにはふたつの独特なデザインの建物があります。どちらも構造的に興味深い建物ですが、そのひとつ市村記念体育館が設計者の感性から生まれた「作品」としての性格が比較的強いのに対して、ここで紹介する佐賀県立博物館はシステムが支配する合理的建築物という違いがあります。

外観の特徴

外観を見ると、まず柱で持ち上げられたボリュームが雁行しながら四方に広がる様子が目に付きます。ボリュームは柱の外側に大きく張り出しており、さらに銃口のように細長く突き出た部分が片持ち構造を強調しています。ボリュームの下のピロティ空間も大きく、ボリュームのスラブ、つまりピロティの天井に当たる部分は格子状の梁が露出しています。全体的に建築技術を誇示する意図を強く感じます。

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形とプランの関係

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銃口のような突出部は建物の東西南北すべての立面にあります。実はこの建物の中心には十字型の階段室があって、その先端が外部に突き出ているというわけなのです。この十字型階段室は平面計画を強く規定していて、十字で分割された四つのゾーンのうち三つが展示空間でひとつが管理部門や収蔵庫に割り当てられています。
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建物全体を支配する格子梁

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建物を支配するもうひとつの“十字”が格子梁です。これは一辺2mのプレキャストコンクリートを連結したもの。その上、鉄骨造の屋根も2mの格子状で構成するなど徹底してシステマチックにデザインされています。確かに、グリッドを揃えた方が施工上も合理的なのでその意味では必然のデザインなのですが、その構造を床や天井に露出して来館者に主張しているところに、設計者の技術に対する信頼というか信奉を感じます。
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階段を活用した内部空間

建物中心から四方に延びる階段を下から見上げた様子が写真05。当時としては合理的な動線計画を考えたのでしょうが、バリアフリーデザインの下、できるだけフラットに移動できることが良しとされる現在では、なかなか実現できない設計でしょう。実際、まるで神社の参道の如き階段を見上げると、階段移動に好意的な筆者でさえ、少々つらく感じることは否めません。
 
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突き当たりの壁をガラスにして視線を抜けさせると「上ろう」という意欲も起きるのですが、前述の「銃口のような突出部」の頂部にある開口はハイサイドライトのため、内部から外は見えないのです。もちろん、後年にエレベーターが増築されているので移動に差し支えはありません。ただ、空間本来の魅力を体感したい方は頑張って階段を上り下りしていただきたい。来場者に苦労をかける点もその時代の持ち味だと受け入れてこそ、いわゆる「昭和モダン建築」は楽しむことができます。

佐賀県立図書館

佐賀県立図書館
所在地:佐賀市城内2-1-41
竣工:1962(昭和37)年
 
博物館から徒歩数分の場所にある佐賀県立図書館も第一工房と内田祥哉氏が設計しているので、併せて紹介しておきましょう。そもそも実は図書館の方が先に完成しているのです。一見するとごく普通の公共施設ながら、プロポーションの良さに設計手法の理論と知性を感じることができます。第一工房のサイトによると、閲覧机・書架の配置から寸法を設定してモデュラーコーディネーションを導入したとのこと。また、外周部の梁やバルコニーの腰壁などに当時のモダンデザインらしさが表れています。

建物名

佐賀県立博物館

Saga Prefectural Museum

設計者

高橋てい一 / 第一工房 + 内田祥哉(「てい」は青偏に光)

TAKAHASHI Teiichi / Daiichi-Kobo Associates

UCHIDA Yoshichika

所在地

佐賀市城内1-5-23

用途

博物館

竣工

1970(昭和45)年

構造・規模

構造:鉄筋コンクリート造 + プレキャストコンクリート造

階数:地上3階

敷地面積:10,758.03m2、建築面積:2,149.11m2

延床面積:4,630.80m2(エレベーター増築部分は含まず)

交通

バス:「博物館前」で下車

備考

1970年度日本建築学会賞、DOCOMOMO JAPAN135 No.97

マーカー上から市村記念体育館、佐賀県立博物館

関連サイト

  1. 佐賀県立博物館・佐賀県立美術館
  2. 第一工房佐賀県立博物館佐賀県立図書館
  3. 第一工房高橋てい一 ウィキペディア

参考文献

  1. 『昭和モダン建築巡礼 西日本編』44~51頁、磯達雄 + 宮沢洋、日経BP社

公開日:2008年11月23日、最終更新日:2013年4月12日 文章と写真を修正・追記し、スライドショーを追加、撮影時期:2005年5月
カメラ:Panasonic LUMIX DMC-FX1(Photoshopで修正)

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