【02】
佐賀市のふたつの現代建築
かつて佐賀城があったエリアにはふたつの独特なデザインの建物があります。どちらも構造的に興味深い建物ですが、そのひとつ市村記念体育館が設計者の感性から生まれた「作品」としての性格が比較的強いのに対して、ここで紹介する佐賀県立博物館はシステムが支配する合理的建築物という違いがあります。
外観の特徴
外観を見ると、まず柱で持ち上げられたボリュームが雁行しながら四方に広がる様子が目に付きます。ボリュームは柱の外側に大きく張り出しており、さらに銃口のように細長く突き出た部分が片持ち構造を強調しています。ボリュームの下のピロティ空間も大きく、ボリュームのスラブ、つまりピロティの天井に当たる部分は格子状の梁が露出しています。全体的に建築技術を誇示する意図を強く感じます。
【03】
形とプランの関係
【04】
建物全体を支配する格子梁
【05】
階段を活用した内部空間
佐賀県立図書館
所在地:佐賀市城内2-1-41
竣工:1962(昭和37)年
博物館から徒歩数分の場所にある佐賀県立図書館も第一工房と内田祥哉氏が設計しているので、併せて紹介しておきましょう。そもそも実は図書館の方が先に完成しているのです。一見するとごく普通の公共施設ながら、プロポーションの良さに設計手法の理論と知性を感じることができます。第一工房のサイトによると、閲覧机・書架の配置から寸法を設定してモデュラーコーディネーションを導入したとのこと。また、外周部の梁やバルコニーの腰壁などに当時のモダンデザインらしさが表れています。
建物名 | 佐賀県立博物館 Saga Prefectural Museum |
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設計者 | 高橋てい一 / 第一工房 + 内田祥哉(「てい」は青偏に光) TAKAHASHI Teiichi / Daiichi-Kobo Associates UCHIDA Yoshichika |
所在地 | 佐賀市城内1-5-23 |
用途 | 博物館 |
竣工 | 1970(昭和45)年 |
構造・規模 | 構造:鉄筋コンクリート造 + プレキャストコンクリート造 階数:地上3階 敷地面積:10,758.03m2、建築面積:2,149.11m2 延床面積:4,630.80m2(エレベーター増築部分は含まず) |
交通 | バス:「博物館前」で下車 |
備考 | 1970年度日本建築学会賞、DOCOMOMO JAPAN135 No.97 |
マーカー上から市村記念体育館、佐賀県立博物館
公開日:2008年11月23日、最終更新日:2013年4月12日 文章と写真を修正・追記し、スライドショーを追加、撮影時期:2005年5月
カメラ:Panasonic LUMIX DMC-FX1(Photoshopで修正)