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阿佐ヶ谷住宅 5/5 )
Asagaya Housing
東京都杉並区、津端修一 + 大高正人 他、1958(昭和33)年、現存せず

補註

  1. 日本住宅公団は1955(昭和30)年に発足。当時はまだ戦後の住宅難が続いており、公団は勤労者向けに良質な住宅を供給した。歴史的には同潤会や住宅営団の流れを汲む組織である。1981(昭和56)年、住宅・都市整備公団に改編。その後も組織変更を繰り返し、現在の都市再生機構(通称:UR都市機構)に至る。
  2. 前川國男(1905〜1986、明治38〜昭和61)。新潟市出身。1928(昭和3)年に東京帝国大学建築学科を卒業後、フランスに渡りコルビュジエの事務所に勤める。1930(昭和5)年に帰国、レーモンドの事務所に入る。1935(昭和10)年に独立。戦後、数々の公共・民間建築を手掛け、建築界をリードした。代表作は東京文化会館など。
  3. 『奇跡の団地 阿佐ヶ谷住宅』(王国社)118頁
  4. コモンがある賃貸の団地(公営住宅)の例。保田窪第一団地(山本理顕、熊本市)、六番池団地(現代計画研究所、茨城県水戸市)。
  5. 『住宅建築』1996年4月号(建築資料研究社)26頁
  6. 『日本住宅公団阿佐ヶ谷住宅の管理・運営の実態に関する考察』松井渓・大月敏雄・松本真澄・深見かほり
  7. アントニン レーモンド(Antonin Raymond、1888〜1976)。現在のチェコ出身。アメリカに移住してフランク ロイド ライトに師事。帝国ホテル建設のためライトとともに来日してそのまま日本で独立する。一時、日本を離れるが、戦後に再来日。多数の建築を設計し、日本の建築デザインに大きな影響を与えた。現存する代表作は群馬音楽センターなど。
  8. 坂倉準三(1901~1969、明治34〜昭和44)。岐阜県羽島市出身。1931(昭和6)年、前川と入れ替わるようにフランスのコルビュジエ事務所に入る。1940(昭和15)年に日本で独立。代表作は神奈川県立近代美術館など。
  9. 田畑貞寿(1931〜、昭和6〜)。長野県出身。1954(昭和29)年、千葉大学園芸学部卒。東京都の西部公園緑地事務所を経て1956(昭和31)年に公団に入る。その後、パキスタンに出向してイスラマバードの建設計画に参画。帰国後、千葉大学の教授や各種学会等の要職を歴任。
  10. 『奇跡の団地 阿佐ヶ谷住宅』(王国社)132・177頁
  11. 『SUR Special Issue 02』(東京大学)40頁
  12. 『集合住宅物語』(みすず書房)236頁
  13. 標準設計を導入したのは公団が最初ではない。戦後に限っていうと、公務員住宅や国鉄官舎は早くから規格化されていた。一般向けの団地はまず公営住宅で導入され、1948(昭和23)年度のプランである48型から年度ごとに制定された。これが戦後の団地の直接的な原型といえよう。48型については夕陽ヶ丘住宅の記事に詳しい。また、住宅史的には51C型が有名である。
  14. 前川國男氏の自邸は切妻の大屋根が架かる木造住宅だ。資材統制下の1942(昭和17)年に竣工。和風とモダニズムが融合したデザインが後に高く評価された。現在は江戸東京たてもの園(東京都小金井市)に移築保存されている。参考:建築マップの記事
  15. 晴海高層アパートは1958(昭和33)年に竣工した公団としては初めての高層棟(10階建て)。竣工年で分かるように、この時期の前川事務所は晴海高層アパートと前川テラスの設計を同時に行っていた。晴海高層アパートは、コルビュジエのユニテ ダビタシオンを参考にスケルトン インフィルの考え方をいち早く取り入れるなど、非常に先進的な集合住宅だった。1997(平成9)年に解体。
  16. プレモス(PREMOS)は前川氏らが戦後間もない頃に共同開発した木造プレファブ住宅の名称。PRE=プレファブ、M=前川、O=小野薫(構造設計)、そしてSは生産を行った山陰工業の頭文字である。1946(昭和21)年に早くも試作第1号が完成し、九州と北海道の炭鉱住宅を中心に約1000棟が建設された。建築史家の藤森照信氏は『昭和住宅物語』でプレモスを失敗と論じているが、これは厳しすぎる。終戦直後の混乱期に一定の成果を上げており、日本のプレファブ建築の先駆例として高く評価すべきだ。
  17. 生物学でいう新陳代謝をテーマにした建築デザインの思想・運動。大高正人氏の他、黒川紀章氏や菊竹清訓氏らが活動した。
  18. 日本とイギリスにおけるテラスハウスのデザインの違いについては、『奇跡の団地 阿佐ヶ谷住宅』(王国社)の第4章(担当:大月敏雄)に詳しい。
  19. 『奇跡の団地 阿佐ヶ谷住宅』(王国社)222頁
  20. 『住宅建築』1996年4月号(建築資料研究社)18~25頁
  21. 『SUR Special Issue 02』(東京大学)20頁
  22. 住所は鷺宮団地:東京都中野区白鷺1、烏山第一団地:東京都世田谷区南烏山5。Googleマップの航空写真モード(2013年8月現在)で確認すると、鷺宮団地はおおむね現存、烏山第一団地は1棟が現存している模様。両方とも分譲住宅で私有地なので見学は十分注意されたい。
  23. 3ヶ所の前川テラスの相違点については、『奇跡の団地 阿佐ヶ谷住宅』(王国社)226~232頁に詳しい。また、『集合住宅の時間』(大月敏雄、王国社)に烏山第一団地の記事が載っている。
  24. 『世界一美しい団地図鑑』(エクスナレッジ)43頁
  25. 『奇跡の団地 阿佐ヶ谷住宅』(王国社)212頁
  26. 『奇跡の団地 阿佐ヶ谷住宅』(王国社)111頁
  27. 『世界一美しい団地図鑑』(エクスナレッジ)41頁
  28. 既存建物の建蔽率と容積率について、阿佐ヶ谷住宅の建て替えについて独自の提案を行った阿佐ヶ谷リサーチプロジェクト(ARP)は建蔽率20.04%、容積率35.73%と算出している。この数値は『SUR Special Issue 02』(東京大学)58頁に掲載。一方、杉並区が作成した説明会資料では建蔽率約28%、容積率約36%となっている。この数値は『SUR Special Issue 02』26頁に掲載。建蔽率に大きな誤差があるのは、どちらかの計算ミスか記載ミスだと思うが、筆者の手持ち資料では正解の判断が付かない。
  29. この段落は『奇跡の団地 阿佐ヶ谷住宅』(王国社)156〜168頁と『SUR Special Issue 02』(東京大学)19〜20頁から要約した。
  30. 『SUR Special Issue 02』(東京大学)21~22頁
  31. 建設通信新聞2013/6/26付記事

参考文献

  1. 『奇跡の団地 阿佐ヶ谷住宅』三浦展・大月敏雄・志岐祐一・松本真澄、王国社
  2. 『世界一美しい団地図鑑』志岐祐一・内田青蔵・安野彰・渡邉祐子、エクスナレッジ
  3. 『集合住宅物語』上田実、みすず書房
  4. 『住宅建築』1996年4月号、シリーズ 集まって住む風景1「阿佐ヶ谷住宅物語 テラスハウスの初心」東京理科大学初見研究室、建築資料研究社
  5. 『SUR Special Issue 02』風と緑と光の田園住宅 失われようとしている集合住宅の名作─公団阿佐ヶ谷住宅、東京大学 都市持続再生研究センター リンク:東京大学グローバルCOEプログラム 都市空間の持続再生学の展開 > special issue volume02 特集 風と緑と光の田園住宅 このページからPDFをダウンロードできる
  6. 『日本住宅公団阿佐ヶ谷住宅の管理・運営の実態に関する考察』松井渓・大月敏雄・松本真澄・深見かほり、日本建築学会大会学術講演梗概集2008年9月
  7. 『成田東四丁目地区地区計画の概要』他2点、杉並区 リンク:杉並区地区計画、地区沿道計画 阿佐ヶ谷住宅の再開発の概要がPDFで公開されている。「成田東四丁目地区」を参照。

リンク

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