白雲台団地00
白雲台団地 ( 1/2 )
Hakuundai Public Housing
山口県下関市、早川邦彦、1996(平成8)年
白雲台団地01

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高低差を活かした立体的な団地

白雲台(はくうんだい)団地は、下関市で戦後比較的早くに建設された市営住宅で、このうち一部の住棟が1990年代に建て替えられました。本稿ではこの建て替え後の住棟を中心に紹介します。
 
建て替え部分の敷地は傾斜地になっていて、住棟配置ではこの高低差を巧みに活用しています。細長い敷地の低い部分に低層棟、高い部分に中・高層棟が平行に並ぶという実直な配置ながら、低層棟を湾曲することで住棟の間に広い中庭を確保し、高い地盤の方から低層棟の2〜3階にブリッジを架けて立体的な街路空間を造り出しています。

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設計者について

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この建て替え計画を手掛けたのは建築家の早川邦彦氏です。彼が設計したラビリンス(1989年、東京)という集合住宅では、ロの字型住棟の中庭から複数の階段で各住戸にアクセスする迷路のようなプランが注目を集めました。公営住宅の設計は 熊本市営新地団地A(くまもとアートポリス参加事業)に続いて白雲台団地が2作目ですが、高低差の活用やブリッジの多用には、立体的な空間構成を得意とする早川氏の作風が遺憾なく発揮されているといえます。
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開放的な階段室

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このブリッジが延びた低層棟の内部は階段室です。一般的な集合住宅の階段室は閉鎖的な場合が多いのですが、白雲台団地では階段室と住戸のバルコニーがつながって住棟を貫通する土間的な空間になっています。ブリッジを歩いているときは、視線が壁に突き当たらず外に抜けるので開放感があります。
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街路のような構成の中層棟

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一方、中層棟の方は6階建てで、ピロティや共用のアトリエ、ヴォイド(空隙)の挿入、独立した階段塔とブリッジ(右の写真)、2・4階のみ共用廊下を通すスキップフロア、5〜6階のメゾネットタイプをはじめ複数の住戸タイプの用意など、こちらも立体的な空間構成が見られます。
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51C型住棟

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さて、建て替えられなかった古い住棟にも目を向けてみましょう。資料等で確認したわけではありませんが、この住棟は外観から判断すると51C型と思われます。51C型とは、建設省(当時)が提示した公営住宅における住戸平面の標準設計の1タイプで、「51」は1951年を意味します。
 
この51C型で採用された食寝分離の考え方とダイニングキッチンは、戦後の住宅設計に大きな影響を与え、日本人のライフスタイルの近代化を促進しました。新旧両方の住棟を見比べながら、戦後の集合住宅のどこがどのように進化したのか、変わらない部分があるとしたらどこか、などを考えてみるのも面白いでしょう。
建物名

白雲台団地

Hakuundai Public Housing

設計者

早川邦彦 / 早川邦彦建築研究室

HAYAKAWA Kunihiko / KUNIHIKO HAYAKAWA ARCHITECT & ASSOCIATES

所在地

山口県下関市上田中町8

用途

集合住宅

竣工

1996(平成8)年

構造・規模

構造:鉄筋コンクリート造

建築面積 3,110.57m2、延床面積:8,207.80m2

交通

バス:新開町バス停下車、徒歩数分

備考

見学・撮影の際は住民のプライバシーに十分な配慮をお願いします。

参考文献

  1. 『新建築』1996年8月号、新建築社
  2. 『建築MAP 北九州』158〜159頁、TOTO出版
  3. 『建築グルメマップ4 中国・四国を歩こう!』247頁、エクスナレッジ

リンク

  1. 早川邦彦建築研究室 > works > 下関市営白雲台団地
  2. NPO法人まちのよそおいネットワーク > 下関市内近現代建築MAP > 下関市営白雲台団地
  3. 建築図鑑 II > 下関市営白雲台団地

公開日:2010年11月5日、最終更新日:2013年5月15日 51C型住棟の写真を差し替え、スライドショーを追加
撮影時期:2005年6月、2012年11月
カメラ:Panasonic LUMIX DMC-FX1、Canon PowerShot S90(Photoshopで修正)

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