下関市体育館00
下関市体育館 ( 1/2 )
Shimonoseki City Gymnasium
山口県下関市、坪井善勝、1963(昭和38)年
下関市体育館01

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大きな三角形のファサード

多くの人は、体育館といえばヴォールト(カマボコ)型やドーム型の屋根を思い浮かべるものでしょう。しかし、下関市体育館はそのような「普通の」体育館のイメージとはずいぶん異なる形です。
 
下関市運動公園に北東側のメインエントランスから入ると、まず体育館のファサードにあたる東立面が見えてきます。大きな三角形を形作るガラス張りのファサードは、幾何学的でモダンな印象を受ける一方、合掌造りの民家のようでもあります。

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三角づくしの外観

ではこの体育館は切妻屋根かと思って側面に回ると、棟が次第に下がって屋根面も三角形を描いていることが分かります。つまり、東立面を頂点としてふたつの棟が末広がりに下がっていて、その末広がりの屋根に挟まれた上面にも勾配屋根があります(ただし、上面の屋根は見えにくい)。全体的な形状は、海を泳ぐエイのイメージといえばお分かりいただけるでしょうか( エイに例えたのは建築史家の倉方俊輔氏)。
下関市体育館04

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屋根材はアルミ

屋根材は30cm角のアルミ板で、経年変化によって一見すると銅板葺きのような色合いを見せています。一番の見所は後方の末端部分。ここは紙をめくるように屋根が反っており、その曲面を覆うアルミ葺きに光が当たったところが実に美しい光沢を放っています。


【05】

設計者は有名な構造家

下関体育館は坪井善勝氏という構造家が設計しました。構造家とは建築業界以外の方には聞き慣れない肩書きかと思いますが、要するに建築物の構造設計をする者のことです。坪井氏は、建築家の丹下健三氏が設計した国立代々木競技場東京カテドラルなどの構造設計を担いました。このように優れた功績を残した構造設計者は、尊敬の念を込めて「構造家」と呼ばれています。
 
一般に、いわゆる建築家が建物の形状や平面計画、全体的な統括を行うのに対して、構造設計者は構造に関する問題だけを担当します。ところが、下関体育館は構造設計者が建築家の立場ですべての設計作業を行いました。これは少々珍しいケースです。坪井氏が「設計」した建物は、下関市体育館と長崎県の弓張岳展望台のふたつしかありません。

建物名

下関市体育館

Shimonoseki City Gymnasium

設計者

坪井 善勝

TSUBOI Yoshikatsu

所在地

山口県下関市向洋町1-12-1

用途

体育館

竣工

1963(昭和38)年

構造・規模

構造:鉄骨造+鉄筋コンクリート造、階数:地上4階

敷地・建築・延床の各面積:未確認

交通

バス:東駅下車、徒歩5分

上から下関市体育館、白雲台団地

関連サイト

  1. 坪井善勝 ウィキペディア

参考文献

  1. 『ドコノモン』倉方俊輔、日経BP社

公開日:2010年10月23日、最終更新日:2011年8月22日 スライドショーの欠落を修正、撮影時期:2010年3月
カメラ:Nikon D50(Photoshopで修正)

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