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カンタベリー大聖堂 ( 1/2 )
Canterbury Cathedral
カンタベリー、 ギョーム ド サンス他、1503
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【01】

イギリスを代表する教会

カンタベリー大聖堂はイギリスを代表する教会のひとつです。イングランド国教会の総本山で世界遺産にも登録されている由緒ある教会だけに、教会やその門前町のカンタベリーは多くの巡礼者や観光客でにぎわっています。カンタベリーへはロンドンのヴィクトリア駅から鉄道で90分程度で行けますし、1日バスツアーもありますので、ロンドンからの日帰り旅行にちょうどよいところです。

教会の歴史

現在のカンタベリー大聖堂の原型は、まず11世紀にロマネスク様式の教会が建立されるも、1174年の火災で損傷します。その後、フランスから招かれた建築家ギョーム ド サンスが、当時最新の建築様式であったフランス様式、すなわちゴシック様式で再建工事を進めます。したがって、カンタベリー大聖堂はイギリスで最初のゴシック建築でもあります。

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【02】

設計者

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もちろん、実際には長い建設期間において複数の建築家が関わっていますが、イギリスでのゴシック様式の先鞭をつけた功績から、このページでは一応サンスの名を設計者にあげています。なお、彼は工事中に足場から落ちて負傷してしまい、イギリス人のウィリアム(William)が後を継ぎました。
 
重厚にして垂直性を感じさせるゴシック特有の雰囲気は見る者を圧倒します。やはりイギリスの陰気な空にはゴシック建築が似合いますね。ただ、建物の大きさに対して敷地にさほど余裕がないので、普通のコンパクトカメラでは全体像がとても収まりませんでした。全体像を撮りたいなら広角レンズは必須です。
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【03】

荘厳な内部空間

外観もさることながら、しかし、カンタベリー大聖堂の最大の見どころはやはり内部空間でしょう。とりわけ身廊は荘厳の一言に尽きます。中に入ったとたん、林立する柱とそれが支える天井の高さに驚かずにいられません。幾筋もの線状要素から成る柱がすーっと天井まで延びる様子は、精神が天に昇るような感覚を受ける一方、石の重さが重力に従って下に伝わるそのエネルギーの流れを可視化しているようでもあり、上昇感と下降感がせめぎ合う不思議な感覚にとらわれます。
 
柱はかなりの太さがあるはずですが、幾筋にも分節されているためにむしろ繊細さを感じます。まるで森の中。私は『風の谷のナウシカ』に出てくる“腐海の底”を思い出しました。

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【04】

天井の精巧なディテール

天井はリブ ヴォールトの中でも特にファン ヴォールトと呼ばれる高度な構造で架けられています。このように複雑で繊細なリブ ヴォールトがイギリスのゴシック教会の特徴です。これがホントに石造なのか、この目で見てもなかなか信じがたい気がします。本当に見事なものです。

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【05】

天井の精巧なディテール

写真05は教会の奥の部分で、聖歌隊席からアプス(内陣部が外に半円形に張り出した部分)の方向を見た様子です。このページでは画像は割愛しましたがアプスも見学できます。

内部撮影の注意

なお、内部の撮影には入場料とは別に撮影料(£2)が必要となります。身廊端部の入口を入ったところにある売店で撮影料を支払うともらえるシールが撮影許可証の代わりなので、胸などの見えやすい位置に貼って下さい。入場料が£4.5ですから合計£6.5と少々高くつきますが、これほどの大聖堂を維持管理するにはお金がかかるでしょうから、この程度の出費は仕方ないでしょう。

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【06】

ステンドグラス

教会建築のもうひとつの見どころがステンドグラス。そのイメージは膨大で、じっくり鑑賞するにはかなりの時間を要します。しかも、大聖堂だけに取り付け位置が高く、正直言って上の方はよく見えません。絵の内容を読み取りたいなら双眼鏡を用意するか、高解像度のデジカメで撮ってパソコンでその画像を見た方がいいでしょう。
 
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右の写真は写真06とは別のステンドグラスの一部を拡大したもの。おそらく聖書の一節ではないかと思いますが、何かの物語が描かれています。中世は識字率が低く、聖書の部数も少なかったので、一般信者に聖書の内容を伝えるメディアとしての役割がステンドグラスにはありました。
 
窓枠で囲まれた1枚のガラスにひとつの絵を描きそれらを並べてストーリーを構成するというのは、現代のマンガに似ていますね。ただ、マンガとは異なりステンドグラスでは下から上に読み進みます。天に向かうベクトルに沿ったコマ運びと言えるでしょうか。
名称

カンタベリー大聖堂

Canterbury Cathedral

設計者

ギョーム ド サンス 他

Guilliaume de Sens

所在地

イギリス イングランド ケント州カンタベリー

25 Burgate, Canterbury, Kent, CT1 2HA

用途

教会(宗派はイングランド国教会)

竣工

1503年

構造

石造

交通

鉄道:カンタベリー ウエスト駅で下車、徒歩約20分

備考

世界遺産

入場料と内部撮影料が必要

上からウエスト ゲート タワー、カンタベリー大聖堂、カンタベリー城

リンク

  1. Canterbury Cathedral 公式サイト
  2. The Official Guide to Canterbury, Whitstable, Herne Bay and Rural Area
  3. 社団法人日本ユネスコ協会連盟世界遺産活動世界遺産紹介ヨーロッパ カンタベリー大聖堂、聖オーガスティン大修道院と聖マーティン教会

参考文献

  1. 『イギリスの大聖堂』志子田光雄・志子田富壽子、晶文社
  2. 『世界の建築・街並みガイド2 イギリス/アイルランド/北欧4国』29頁、エクスナレッジ
  3. 『週刊ユネスコ世界遺産6 ウエストミンスター宮殿』20~21頁、講談社
  4. 『図説 大聖堂物語 ゴシックの建築と美術』佐藤達生・木俣元一、河出書房新社

公開日:2005年3月26日、最終更新日:2011年7月18日 スライドショーを追加、撮影時期:2004年9月
カメラ:Panasonic LUMIX DMC-FX1(Photoshopで修正)

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