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歴史
セント キャサリン ドックは、ロンドンを流れるテムズ川に接するドック(波止場)です。テムズ川を航行する船が物流を担っていた中世から第二次世界大戦後までは、ここで荷物の上げ下ろしをしていました。現在のドックは、土木技師トーマス テルフォードの設計で1828年に建設された状態を受け継いでいます。
大型船舶に対応できないことを理由にドックは1968年に閉鎖されて衰退しますが、後に再開発が行われ、ドックは個人所有のヨットやクルーザーが停泊するマリーナとなり、周囲にはホテル、店舗、集合住宅が建ち並び、ウォーターフロントとして再生を果たします。
セント キャサリン ドックは、ロンドン塔やタワーブリッジのすぐ近くにありながら、高層ビルの影に隠れて直接見えないため、ちょっとした穴場スポットです。ロンドン観光の途中、落ち着いた場所で一息つきたいときには、ここをおすすめします。
Google マップのキャプチャ
可動橋
ドックの概要を説明しておくと、全体的にはやや末広がりの形になっていて、半島状に突き出た部分によって3つの水面に分かれており、テムズ川とは閘門(こうもん)で接続しています。“半島”の先端と閘門の両端に架かっている合計4基の橋は、船が通過できるよう、すべて可動橋で造られています。
橋の下を船が通過するとき、何らかの仕組みで橋桁を動かすのが可動橋です。イギリスの可動橋といえば誰もがタワー ブリッジを思い浮かべるでしょう。可動橋は、水上交通の衰退と自動車の増加で消えていったものの、産業革命時代の運河が残っているロンドンやイギリス各地には、今も多数の可動橋が存在します。つまり、イギリスでは水上交通が過去の遺物になっておらず、近代と現代のシステムが共存しているわけで、可動橋のある光景は“イギリスらしさ”を示す一例といえるのです。このような観点から、ロンドン中心部のかつての波止場にある可動橋群を紹介いたします。
本稿の構成
セント キャサリン ドックにある可動橋は4基。ドックの岸壁は1828年からあまり変わっていないと思われますが、可動橋は4基とも架け替えられています(架け替え時期は不明)。橋梁名が分からないので便宜的に1〜4の番号を付けて、1ページに1基ずつ紹介します。また、可動橋4の傍らに1828年当時の可動橋が保存されていたので、これを可動橋5として4と同じページに掲載しています。
名称 | セント キャサリン ドックの可動橋群 Movable Bridges of St Katharine Docks |
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設計者 | ドックの設計者はトーマス テルフォード( Thomas Telford )。ただし、彼が個々の橋梁や建物まで設計したかどうかは分からない。本稿で紹介した可動橋は後年の架け替え。 |
所在地 | イギリス ロンドン 50 St. Katharines Way, London E1W 1LA |
用途 | 橋 |
竣工 | ドックの竣工は1828年。現在の可動橋は未確認。 |
構造 | 鉄骨造 可動橋の形式は跳開式3基、引込式の現役と遺構が各1基。 |
交通 | 鉄道:地下鉄 Tower Hill 駅で下車、徒歩約10分 |
リンク
- St KATHARINE Docks 公式サイト
- St Katharine Docks ウィキペディア(英語)
- ロンドンナビ > セント・キャサリン・ドック
- エイビーロード > テムズ河の要塞ロンドン塔のすぐ側!セント・キャサリン・ドックス
- ヴァージン アトランティック航空 > 江國まゆのしぼりたてロンドン! > 金曜日はセント・キャサリン・ドックスで。
- 可動橋、閘門 ウィキペディア
建築マップで紹介している可動橋
- 下関漁港閘門 水門橋(山口県)、ブルーウィングもじ(福岡県)、筑後川昇開橋(佐賀県・福岡県)、本渡瀬戸歩道橋(熊本県)
- タワーブリッジ(イギリス)
公開日:2005年9月5日、最終更新日:2012年10月30日 文章と写真を全面的に修正、スライドショーを追加、撮影時期:2004年9月
カメラ:Panasonic LUMIX DMC-FX1(Photoshopで修正)