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30セント メリー アクス ( 1/2 )
30 St Mary Axe
ロンドン、ノーマン フォスター、2004年
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【01】
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【02】

テムズ川両岸の奇妙なビル

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ロンドン市庁舎(左)

ロンドンの観光名所 タワー ブリッジからテムズ川の両岸を見渡すとふたつの奇妙なビルが目に留まります。左岸のヘルメットのような建物は ロンドン市庁舎。そして右岸の葉巻のような超高層ビルは「30セント メリー アクス」という名前なのですが、ロンドン市民はガーキン(ピクルスに使うキュウリ)とかエロティック ガーキン(意味は察してください)などと呼んでいるようです。
 
金融街シティにそびえるこのビルの正体はスイス リ社という再保険会社の本社屋。どちらもイギリス建築界の巨匠ノーマン フォスターが設計しました。
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【03】

都市景観に与えた変化

かつてのロンドンでは高さ111mのセントポール大聖堂より高い建物は建てないとの不文律がありました。しかし、戦後の経済発展でオフィスビルの需要に応えるためにはこれを守ってばかりもおれず、1960年代以降はロンドンにも超高層ビルが建ち始めます。
 
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右の写真は テート モダン最上階のカフェから見た「シティ」の景観で、セントポール大聖堂の周辺には一定の景観規制がかかっています。手前の橋はこれもフォスターが設計した ミレニアム ブリッジ。30セント メリー アクスはもう少し右手に位置します。
 
ニューヨークや東京といった他の大都市に比べると、ロンドン/シティのビルは単体・スカイラインとも少々魅力に乏しいことは否定できませんでした。フォスターによる二棟のビルはそこに大きな変化を及ぼすことになります。特に30セント メリー アクスは超高層ビルなだけに市民の間で景観論争を巻き起こし、その独特の形状はグロテスクだとの批判もあったようです。
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【04】

形状の合理性

しかし、グロテスクという声はおそらく完成予想CGか何かを見た第一印象だったのではないでしょうか。本物を実際に見たところ、意外といいではないかと私は思いました。上の階ほど先細りになっている形状は建物のボリューム感の低減に効果があり、街並みに与える威圧感は一般的な矩形のビルよりもかなり低く抑えられています。
 
ガラスの色が異なっている部分は、これに沿って吹き抜けがあることを示しています。渦巻き状の吹き抜けは、ビル全体の換気を促して空調負荷の低減に効果があるとのこと。一見、奇抜に思える形状は、威圧感の抑制やエコロジー対策をはじめ、ビル風の低減、日影範囲の減少、内部空間の無柱化といったことを実現する合理性に裏付けられているのです。
 
超高層ビルの設計でユニークな形を提案する建築家は何人もおれども、形と理論をこれほど高いレベルで融合させるとは、さすがはフォスター卿と感心するしかありません。まあ、ちょっと汚れが目立つのが残念ではありますが。

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【05】

新旧の建築が混在

このビルの近くには古い教会やロンドン塔、そして世界的な保険組合ロイズ オブ ロンドンのビルなどが建っています。このようにハイテクビルと古い建築が混在する景観こそロンドンの魅力です。

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名称

30セント メリー アクス

30 St Mary Axe

またはスイス再保険会社本社(Swiss Re Headquarters)

設計者

ノーマン フォスター / フォスター アンド パートナーズ

Norman FOSTER / Foster and Partners

住所

イギリス ロンドン

St. Mary Axe, Bury Street, Bury Court and Browns Buildings, London

用途

事務所

竣工

2004年

構造

鉄骨造

交通

鉄道:地下鉄の Bank 駅か Monument 駅で下車、徒歩約10分

備考

関係者以外立入禁止。オープンハウスの日のみ一般公開される。


公開日:2005年2月20日、最終更新日:2013年6月23日 文章と写真を若干修正し、スライドショーを追加、撮影時期:2004年9月
カメラ:Panasonic LUMIX DMC-FX1(Photoshopで修正)

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