伝統と革新が両立しているキュー植物園
左:パーム ハウス、右:テンパレート ハウス
【02】
【03】
【04】
形の特徴
プリンセス オブ ウェールズ コンサバトリーはゴードン ウィルソン氏の設計で1987年に竣工しました。敷地内の温室群のうち、パーム ハウス、テンパレート ハウス、プリンセス オブ ウェールズ コンサバトリーの3棟が特に大きく、建築ファンとしてはぜひ見ておきたい温室です。切妻屋根を直接置いたような、登り梁で構成された形が特徴的。推測ですが、屋根面を最大限に増やすことでより多くの太陽エネルギーを取り込んでいるのでしょう。ボリュームが細かく分節されているのは、内部空間の間仕切りと単調さの回避を兼ねているものと思われます。
植物園の歴史と温室名の由来
温室の名前について説明すると、コンサバトリー(conservatory)は温室を、プリンセス オブ ウェールズ(Princess of Wales)はイギリスを構成する4国のひとつであるウェールズの公妃を意味します。そもそもキュー植物園の歴史を遡ると、ジョージ2世とキャロライン王妃の邸宅、皇太子フレデリックとオーガスタ妃の邸宅、このふたつの庭園に分けられます。特にフレデリック・オーガスタ夫妻は庭園造りに熱心で、フレデリックは急逝しますがオーガスタが庭園を受け継ぎ、1759年を植物園として開園。これがキュー植物園の始まりです。その後、1802年にジョージ2世側の庭園と合体して現在の形になりました。
なお、歴代のイギリス王室の王子にはプリンス オブ ウェールズ(ウェールズ公)の称号が与えられており、フレデリックがそのプリンス、オーガスタがプリンセスに当たります。つまり、温室の名前にウェールズ公妃の称号を冠したのは、キュー植物園の開設と発展に貢献したオーガスタを記念する意味があるわけです 註1。
【05】
【06】
【07】
内部
この温室では、熱帯の乾燥地方から湿潤地方にかけての10の気候帯の植物を生育しています。他の温室よりも植物が密集していなくて見通しがよく、ガラスの大屋根に覆われた空間が堪能できます。
名称 | プリンセス オブ ウェールズ コンサバトリー Princess of Wales Conservatory |
---|---|
設計者 | ゴードン ウィルソン Gordon Wilson |
住所 | イギリス ロンドン リッチモンド キュー王立植物園 Royal Botanical Gardens Richmond, Surrey TW9 3AB |
用途 | 温室 |
竣工 | 1987年 |
構造 | 鉄骨造 |
交通 | 鉄道:District 線または North London 線の Kew Gardens 駅で下車、ヴィクトリア ゲートまで徒歩約10分 |
備考 | 世界遺産(植物園全体) |
左からテンパレート ハウス、パーム ハウス、プリンセス オブ ウェールズ コンサバトリー
補註
- 2013年現在はイギリス王室のチャールズ皇太子がウェールズ公である。よって、本来はカミラ夫人がウェールズ公妃になるはずだが、チャールズ皇太子と離婚した故ダイアナ妃に遠慮してこの称号を継承していない。プリンセス オブ ウェールズ コンサバトリーが完成した1987年はチャールズ皇太子とダイアナ妃の離婚前で、完成式典にはウェールズ公妃であるダイアナ妃が出席した。
参考文献
- 『ロンドンの公園と庭園』門井昭夫、小学館スクウェア
- 『イギリス庭園紀行(上)』邸景一・寺田直子・柳木昭信・今井卓・小嶋三樹、日経BP企画
リンク
- キュー王立植物園 公式サイト日本語版
- 英国ニュースダイジェスト > 初心者でも楽しめる英国の花 キュー・ガーデン・ガイド
- イギリスの片隅で庭仕事 > キュー・ガーデンズ3 プリンセス・オブ・ウェールズ・コンサバトリー
- キューガーデン ウィキペディア
公開日:2013年9月14日、最終更新日:2013年9月14日、撮影時期:2004年9月
カメラ:Panasonic LUMIX DMC-FX1(Photoshopで修正)