【02】ロンドン市庁舎の最上階から
ロンドンの象徴
ロンドンと聞いて多くの人が思い浮かべるであろう風景といえば、やはりタワー ブリッジとビッグベンでしょう。観光ガイドなどでロンドンを紹介する際には必ず登場する象徴的な存在ゆえ、いまさら取り上げるのは新鮮さに欠ける感があるかもしれませんが、やはりタワー ブリッジに触れずしてロンドンやイギリスは語れません。
古典的な伝統と産業革命以降の新しい伝統、このふたつの伝統が見事に融合した産物であるタワー ブリッジが、現役の産業遺産としてロンドンのど真ん中で生き続けていることは、日本のこれからの街造りにも多くの示唆を与えてくれます。
【03】
橋の規模
【04】
現役の可動橋
塔が2本建っているので橋全体は3スパン。そのうち可動橋の部分は中央の橋桁で、塔と陸地の間は吊り橋が架かっています(写真04)。ロンドンの中心部だけあって交通量はかなり多い(もちろん観光客も)。にもかかわらず現役の跳開式可動橋(跳ね橋)であるという事実こそ、この橋が単なる観光名所にとどまらないロンドンの象徴的存在たる所以です。
橋桁が上がっている間は車は待っていなければならないという制約を許容する社会の融通性と、現在も機能している水運、つまり人々の理解と実用上の理由という条件がちゃんと揃っているわけで、客寄せパンダとして残しているのでは決してないのです。
【05】
内部と構造
塔の上部は橋の歴史を展示する博物館になっています。写真05は頂部の小屋組を見上げた様子。ご覧の通り、塔の構造は鉄骨造で、外壁の石材は張っているだけ。現代建築と同じです。
入館時の注意
なお、私が訪れた2004年9月の時点でも、塔に上るには入口のエレベーターホールでセキュリティチェックを受けなければいけませんでした。金属探知器に引っかかりそうな物は持ち歩かないか、検査前に出しておいた方がいいでしょう(空港の検査と同じ)。混雑時は待たされるかもしれません。
【06】
梁を利用した空中通路
上からの景観
【07】
昔のエンジンルーム
また、橋の市庁舎側にある昔のエンジンルームも公開されていて、橋桁の開閉のための蒸気エンジンなどの機械類を見ることができるので、そちらも見学をお勧めします。あんな大きな橋桁を動かす機械にしては意外に小さく感じました。なお、現在の動力源は別室にあって、その見学ツアーも催されているとのこと(これは要予約)。
愛される土木遺産
陸上交通と水上交通が共存する可動橋というシステム、それを実現させた製鉄業と蒸気機関、建設技術、さらに巨大な土木構造物を歴史様式で見事に装飾したデザイン。タワー ブリッジは紛れもなく産業革命の最高傑作と言えるでしょう。そしてそれが過去の遺物にならず、現代社会と共存して人々に愛されている様子を見るにつけ、土建国家と言われる日本にこれほど親しまれている土木構造物が果たしてあるだろうかと考え込んでしまいます。
名称 | タワーブリッジ Tower Bridge |
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設計者 | ホーレス ジョーンズ + ジョン ウルフ バリー Horace Jones + John Wolfe Barry |
所在地 | イギリス ロンドン Tower Bridge, London SE1 2UP |
用途 | 橋 |
竣工 | 1894年 |
構造 | 鉄骨造(可動橋の形式は跳開式) |
交通 | 鉄道:地下鉄 Tower Hill 駅で下車、徒歩5分 |
備考 | タワー内部の公開時間・入場料や橋桁が開く時刻は公式サイトで確認のこと。 |
リンク
- タワー橋博覧会 タワー ブリッジ公式サイト日本語版
- 英国ニュースダイジェスト > シティを歩けば世界がみえる > 第27回 開け、開運の橋
参考文献
- 『THE TOWER BRIDGE EXPERIENCE』現地で購入した日本語版ガイドブック
建築マップで紹介している他の可動橋
- 下関漁港閘門 水門橋(山口県)、ブルーウィングもじ(福岡県)、筑後川昇開橋(佐賀県・福岡県)、本渡瀬戸歩道橋(熊本県)
- セント キャサリン ドックの可動橋群(イギリス)
公開日:2005年7月19日、最終更新日:2012年11月23日 写真の修整・差し替え・追加、撮影時期:2004年9月
カメラ:Panasonic LUMIX DMC-FX1(Photoshopで修正)