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三菱化学 大畑社宅

概要

筆者が訪れたとき、三菱化学 大畑社宅は既に解体が進み最後の1棟のみ残っている状態だった。この住棟が並んでいる光景が見られなかったのは残念だが、存在を記録に残せただけでもよしとしたい。写真の通り、住戸の床レベルが半階ズレているという非常にユニークな設計である。傾斜地の団地において地形に沿って床レベルを変えた住棟は確かにあるが、平坦にも関わらず意匠的な効果を狙って変化させる例は珍しく、筆者が見たのはこの大畑社宅と日本鋳鍛鋼の第二緑ヶ丘社宅中層棟(福岡県芦屋町)の2ヶ所だけだ。

菊竹清訓氏のブリヂストン殿ヶ谷第一アパート(横浜市、1957・昭和32年)が同様のデザインで有名だが、この大畑社宅が殿ヶ谷第一アパートや第二緑ヶ丘社宅の影響を受けたのか、それとも設計者が独自に考案したものかは分からない。ただ、殿ヶ谷第一アパートのプロポーションの良さに比べると、大畑社宅のような中層棟の場合は正直いってあまり格好いいデザインではない。その上、バルコニーを避難経路に利用できない点が大きなデメリットだ。おそらくそれが最大の理由だろう、集合住宅の設計手法として定着しなかった。

なお、同じ床レベルで住戸が隣り合う部分は、バルコニーに隔て板がないことや洗濯物を2戸の中間に干していることから、2戸をつなげて1戸にしていたようだ(いわゆる二戸一 ニコイチ)。階段室側立面の窓の形状が場所によって異なっていたので、内部はかなり改修したと思われる。また、1階住戸の高い方の床下は倉庫になっていた。

データ

住所:福岡県北九州市八幡西区幸神2
竣工:1957(昭和32)年度
撮影:2004(平成16)年12月
備考:現存せず


作成日:2013/11/9、最終更新日:同左

上から三菱化学 中畑社宅、大畑社宅

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