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田川炭鉱 松原社宅

概要

田川炭鉱伊田坑(福岡県田川市)の周辺にはかつて多数の社宅が存在した。本稿で紹介する松原社宅もそのひとつで、伊田坑の西約1kmに位置し、住宅の大部分は1936〜40(昭和11〜15)年に、一部は戦中・戦後に建設された。閉山後、長年経過すると老朽化が著しいため、炭住街は段階的に鉄筋コンクリート造の公営住宅へと建て替えられ、2009(平成21)年末の時点で南端に27棟の木造長屋を残すのみとなった。

旧産炭地に炭鉱住宅街はまだ何カ所か現存しているが、増改築や建て替えが行われて炭鉱時代の面影は薄くなっているのが実情だ。そうした中、住宅や共用便所など当時の状態を比較的維持している松原炭住は歴史的価値が高く、世界遺産候補の構成資産に伊田坑を登録するかどうかの検討作業に関連して、同炭住の保存を目指す動きがあったものの、最終的に田川市は保存を断念して住宅はすべて解体された。

この最後の部分については「建築としての炭鉱住宅―三井田川鉱業所・松原炭鉱住宅を対象として―」に詳しい(参考文献1)。同論文によると27棟中15棟が1936(昭和11)年に竣工、以下1937〜38(昭和12〜13)年に7棟、戦後の1948(昭和23)年に5棟が竣工している。

左から田川炭鉱 松原社宅、田川炭鉱伊田坑

平面(間取り)は21棟が64型と呼ばれる「6帖+4.5帖+台所」の構成で延床面積は約29㎡。これは田川市石炭・歴史博物館の屋外展示スペースに復元された炭鉱住宅の昭和期部分とほぼ同じだ。強いて外観の違いを挙げると、屋根(瓦、波板スレート)と基礎(赤レンガ、鉱滓レンガ)の建材が異なる。残る6棟は特選住宅と呼ばれるタイプで、延床面積は約34〜43㎡と広く、内部に便所も備わっていた。ただし、平面的な特徴は論文を読んだから分かったのであって、現地を訪問した際はそのような違いは読み取れなかった。

データ

住所:福岡県田川市伊田
竣工:1936〜38(昭和11〜13)年、1948(昭和23)年
撮影:2009(平成21)年12月
備考:現存せず

リンク

  1. トライスターの放浪日記三井田川鉱業所と松原炭住
  2. あれなん旧三井田川鉱業所 松原地区炭鉱住宅
  3. MAGの写真創庫福岡・松原炭鉱住宅
  4. いかすみのひとり言[日常] 田川市松原旧三井田川鉱業所 炭鉱住宅

参考文献

  1. 「建築としての炭鉱住宅―三井田川鉱業所・松原炭鉱住宅を対象として―」田中翔大、九州大学大学院人間環境学府 都市共生デザイン専攻アーバンデザイン学 2010年、LinkIcon当該論文のページ


作成日:2014/6/3、最終更新日:同左

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