三池炭鉱 有明坑
概要
有明坑は、福岡・熊本の県境に広がる三池炭鉱の坑口のひとつである。ただ、官営時代の国や払い下げ後の三井が開発した他の坑口とは歴史が異なり、有明坑の開発を始めたのは日鉄鉱業という八幡製鉄所(福岡県北九州市)の原料部門を出自とする炭鉱会社だ。1958(昭和33)年、同社は福岡県大牟田市の隣接する高田町(現在のみやま市高田町)の沖合で人工島の建設に着手。そして竪坑と坑道を掘削し、第一竪坑櫓を建てたものの、断層と湧水のため1967(昭和42)年に工事を中断した。
その後、有明坑を買収した三井が工事を継続、1976(昭和51)年にようやく出炭を開始する。翌年には他の坑道と接続されて三池炭鉱は四山・三川・有明坑の三坑体制となり、1997(平成9)年の閉山時まで鉱員の入昇坑口として使われていた。
閉山後しばらく放置されていた有明坑は、2007(平成19)年に福岡県内の建設会社に売却された後、大半の施設が解体された。このとき、保存を要望する声を受けて2基の竪坑櫓の解体はひとまず回避されたが、有明坑跡地に大規模太陽光発電所が建設されることになり、2012(平成24)年8〜9月には櫓も解体の予定だ。エネルギー政策の転換に翻弄された炭鉱が、脱原発という大転換に巻き込まれて姿を消すとは、皮肉な話である。
2013(平成25)年3月、跡地に太陽光発電所が完成。敷地内には1984(昭和59)年に発生した有明坑の坑内火災事故の殉職者慰霊碑も建立された。