ネイブルランド
概要
ネイブルランドは福岡県大牟田市の埋立地にかつて存在したテーマパークである。同市を中心に操業していた三池炭鉱が1997(平成9)年に閉山するため、地域振興策の一環(いわゆる「あらかじめ対策」)として、福岡県・大牟田市・三井系企業などが出資する第3セクターの運営で、閉山前の1995(平成7)年に開業した。しかし、来場者の伸び悩みで経営難に陥り、開業からわずか3年余りの1998(平成10)年に約60億円の負債を抱えて閉園する。
閉園後、園内の施設は放置されたが、隣接する大牟田市石炭産業科学館が所有する炭鉱の鉄道車両の展示場に敷地の一部が当てられていた時期があり、割と自由に出入りが可能だった。本稿掲載の写真はその頃の撮影である。その後、跡地に私立大学の進出が決まったため、2011(平成23)年に更地となった。
ネイブルランドは比較的小規模なテーマパークだが、遊園地・水族館・植物園・動物園といった施設を持っていた。率直にいって内容を欲張りすぎであり、テーマパークといいながらテーマが絞り込めていなかったと批判されても仕方あるまい。ちなみにネイブル(navel)とは「ヘソ」の意味で、大牟田市が九州のほぼ中心、すなわちヘソに相当する位置にあることからネイブルランドと付けられた。このネーミングからしてコンセプトやセールスポイントの不在が表れているといえよう。
メインエントランスの前には何の脈絡もなくクジラのオブジェがあった。これは、1938(昭和13)年に市内の三池炭鉱三川坑や工場の建設現場からクジラの化石が発掘された歴史にちなんで置かれたとのことだが、ヨーロッパの伝統建築を模したチープな建物と妙にリアルなクジラとの組み合わせは、なかなかシュールな光景だった。
筆者が訪れた時点で閉園から10年ほど経過していたにも関わらず、温室の一部の植物はまだ生きていた。観賞の目的で植えられたものが見捨てられ、次々に枯死する中を生き残ったのかと思うと、感傷的な気持ちを抱かずにはいられなかった。
データ
住所:福岡県大牟田市岬町
竣工:1995(平成7)年
撮影:2007(平成19)年8月、2008(平成20)年2月、2012(平成24)年11月
備考:現存せず
リンク
参考文献
- 『廃墟という名の産業遺産』インディヴィジョン
作成日:2012/11/14、最終更新日:同左