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宮田山トンネル

概要

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宮田山

八幡製鐵所の八幡〜戸畑地区を結ぶ専用鉄道くろがね線は、全長約6kmの短い路線ながら、宮田山トンネルという長さ1180mのトンネルが存在する。宮田山は北九州市八幡東区と戸畑区にまたがる標高106mの山で、宮田山トンネルはこれを東西に貫いている。主に人力による昼夜兼行の工事は断層や湧水に悩まされ、工期は約1年11ヶ月かかった。

くろがね線の他の部分と同じく、トンネルは沼田尚徳(ひさのり)ら八幡製鐵所土木部が設計した。土木構造物にも意匠性を重んじる沼田の意向によって、宮田山トンネル両端の坑口にはそれぞれ手の込んだデザインが施されており、八幡側坑口は両側に付柱を、上部にペディメントを配した正統派のルネサンス様式、一方の戸畑側坑口は城郭をイメージした自由なデザインである。どちらも材質は花崗岩。なお、奇妙なことに、両方とも扁額のスペースは確保され、本来なら「宮田山隧道」とでも刻まれているはずなのに、なぜか空白のままになっている。『八幡製鐵所土木史』に載ったトンネルの竣工写真が『福岡県の近代化遺産』に転載されているのだが、それを見ると竣工時も空白だ。これほど立派な坑口を造りながらなぜ扁額を付けなかったのだろうか。何か複雑な事情があるのかもしれないが、詳細は不明である。

左から枝光橋梁、宮田山トンネル八幡側坑口、同戸畑側坑口

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八幡側坑口
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同左、扁額部分
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戸畑側坑口
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同左、扁額部分
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ところで、トンネルの直上にあたる部分には道路が延びている。八幡側は望玄坂という名前が付いていて、山頂を越えた戸畑側は特に名前は無いが延々と道路が続く。宮田山トンネルは開削工法ではないので、工法的にはトンネルの直上を道路が占める必要はないはずだし、仮に施工上の理由があったとしても、竣工後は住宅を建てても支障はないだろう。この道路も宮田山トンネルの謎である。筆者はパイプライン用地ではないかと推測するが、裏付けは取れていない。

データ

住所:福岡県北九州市八幡東区宮田町・戸畑区西大谷1
設計:沼田尚徳 / 八幡製鐵所土木部
竣工:1930(昭和5)年
撮影:2010(平成22)年7月

参考文献

『北九州の近代化遺産』北九州地域史研究会、弦書房
『福岡県の近代化遺産』福岡県文化財調査報告書第113集、福岡県教育委員会

作成日:2013/10/19、最終更新日:同左

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