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機関車

概要

田川市石炭・歴史博物館の屋外展示場に保存されている6両の機関車を紹介する。動力ごとの内訳は電気機関車4両、ディーゼル機関車1両、そして圧縮空気式という珍しい機関車が1両。所属別では山野炭鉱1両、三池炭鉱と大峰炭鉱が各1両、所属不明/未確認が2両である。山野、三池、大峰はいずれも福岡県内の炭鉱。各機関車の概要は下記の通り。なお、同博物館の9600形蒸気機関車は別の機会に紹介する予定だ。

山野炭鉱坑外用電気機関車

山野炭鉱坑外用電気機関車
製造:三池製作所、製造年:1950(昭和25)年
重量:6.6t、電動機:25馬力2台、速度:12km/h、軌間:610mm

これは三池製作所が炭鉱用に製造した電気機関車で、展示車両は三井山野炭鉱(福岡県の旧稲築町、現嘉麻市)の坑外軌道(地上の軌道)で炭車の牽引に使われていた。側面の姿から凸型電気機関車(凸電)と呼ばれたこのタイプは戦前~戦後初期によく見られた。三池製作所は三井三池炭鉱(福岡県大牟田市)の工作部門を起源とするメーカーである。

大峰炭鉱坑内用ディーゼル機関車

大峰炭鉱坑内用ディーゼル機関車
製造:日立製作所、製造年:1956(昭和31)年
重量:6.2t、電動機:30馬力、速度:12.4km/h、軌間:610mm

これは日立製作所が鉱山・炭鉱用に製造したディーゼル機関車で、展示車両は古河大峰炭鉱(福岡県田川郡川崎町・大任町)の坑内軌道(坑道内の軌道)で使われていた。

三池炭鉱坑内用架空線式電気機関車

三池炭鉱坑内用架空線式電気機関車
製造:三池製作所、製造年:1950(昭和25)年
重量:4〜10t、電動機:未確認、速度:10〜15km/h、軌間:610mm

これは三池製作所が炭鉱用に製造した電気機関車で、展示車両は三井三池炭鉱(福岡県大牟田市)の坑内軌道で使われていた。架空線式(トロリー式)とはパンタグラフから電力を得る方式のこと。電気機関車では一般的な方式だが、炭鉱など一部の産業分野では蓄電池式などを使用する場合もあるので、それと区別するために架空線式と付けている。

三池炭鉱坑内用リール式電気機関車

三池炭鉱坑内用リール式電気機関車
製造:三池製作所、製造年:1950(昭和25)年
重量:4~6t、電動機:未確認、速度:4km/h、軌間:610mm

これも三池製作所が炭鉱用に製造した電気機関車で、展示車両は三井三池炭鉱の坑内軌道で使われていた。車体にケーブルリールを内蔵しており、ケーブルを引き出して給電を受けながら走行する。ケーブルの長さは150~300m程度で、当然その範囲内でしか動けないが、保安上、パンタグラフのスパークを避けたい場所では、リール式や後述の2方式による機関車が必要となる。本機は主に坑道先端部での石炭運搬に使用された。

蓄電池式電気機関車

蓄電池式電気機関車
製造:未確認、製造年:未確認
重量:2~8t、電動機:未確認、速度:4〜7.5km/h、軌間:610mm

これは車体に内蔵された蓄電池(バッテリー)で走行する電気機関車である。展示車両のメーカー、所属については現地の説明板やリンク2に記載がなく分からない。少なくとも福岡県内の炭鉱の坑内軌道で使われていたものだろう。また、蓄電池式には普通型と安全性の高い防爆型があるが、本機がどちらのタイプかも未確認である。同方式は坑道に架線を張らなくても運用できる上、防爆型ならスパークを嫌う場所でも使用できる。

圧縮空気機関車

圧縮空気式機関車
製造:日本開発機製造、製造年:1959(昭和34)年
重量:2.4t、最大牽引力:530kg、速度:4km/h、軌間:610mm

本機は圧縮空気でピストンを動かすというたいへん珍しい機関車(エアーロコ)で、国内には3両しか現存しないらしい(註1)。連続走行距離が短いという欠点はあるが、電気を使用せず火花が発生しないため、メタンガスの多い坑内での運用に適している。また、圧縮空気式は無火機関車の一種であり、炭鉱以外にも化学工場や粉塵爆発の危険性がある現場などで運用されている(リンク4)。リンク2に本機は「日本開発機」の製造と載っているが、これは日本開発機製造株式会社(1962・昭和37年に三井造船と合併)のことだと思われる。現地の説明板には「三井建設株式会社寄贈」と記載されているので、少なくとも現役最後の時点では同社が坑内での作業用に使用していたと見られる。

データ

所在地:福岡県田川市大字伊田2734 田川市石炭・歴史博物館
撮影:2014(平成26)年2月

補註

  1. 圧縮空気式機関車の現存3両は、田川市石炭・歴史博物館と直方市石炭記念館(福岡県直方市)が1両ずつ保存、残る1両は姉崎機関区というブログ(リンク5)によると、新潟県糸魚川市の青海駅付近のある会社の敷地内に保存されている。新潟の保存機のメーカーもやはり日本開発機で、ブログの写真には同社のプレートが載っているが、その中央に三井のマークが付いていることから、もともと日本開発機は三井グループの会社だったと思われる。

リンク

  1. 汽車・電車1971〜田川市石炭・歴史博物館
  2. 産業技術史資料情報センター産業技術史資料データベース「田川市石炭資料館」で検索
  3. 津軽軽便堂写真館山野炭鉱の凸型電機1
  4. 無火機関車 ウィキペディア
  5. 姉崎機関区2008年富山撮影旅行 その62

作成日:2014/9/28、最終更新日:2014/10/7

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