【02】
美術館・博物館の集積地
ミュージアムクォーター ウィーン(MQ)とは複数の美術館や博物館が集まった地区の名称です。ウィーンの観光名所である美術史美術館・自然史博物館の隣にあり、環状道路リングシュトラーセ向かい側の新王宮内部の博物館も含めて一帯は美術館・博物館の集積地になっています。
ミュージアムクォーターの歴史
MQはもともと王宮の厩舎や馬術学校だったところで、その建物はフィッシャー フォン エルラッハなどの設計で18〜19世紀にかけて建てられました。20世紀初頭には国際見本市の会場に使われていました。
その後、美術館と博物館への再生が決まり、コンペでオルトナー&オルトナーを設計者に選出、彼らは歴史的建築物の修復のベテランであるマンフレッド ヴェドルンと協働でこのプロジェクトに当たり、2001年にMQがオープンします。
【03】Google Earthのキャプチャ
全体構成
MQの敷地は既存建物に囲まれていて(写真03)、その中に3棟の美術館が新たに建設されました。左手前の白い直方体がレオポルト美術館、その右(中央)は旧馬術学校を改修したホールE+Gという多目的ホール、その裏の赤く細長い建物はクンストハレ ウィーン、右奥の丸みを帯びた建物は近代美術館です。
既存建物には建築センター、子供博物館、モダンダンスや演劇のスタジオ、そして飲食店などが入っています。MQをすべて見るには1日以上かかるでしょう。私は時間がなかったので、新築された3つの美術館の外観と近代美術館の内部を駆け足で見学しただけに終わりました。
【04】
近代美術館(Museum of Modern Art)
近代美術館は近現代美術が専門の美術館。丸みを帯びた屋根に黒っぽい玄武岩貼りの外観は、まるで石棺のような独特なデザインです。寡黙にして強烈な存在感を放ち、既存の歴史的建築と緊張感のあるバランスを保っています。
内部は、玄武岩貼りのエントランスホール吹き抜けが見応えあります(写真は撮っていない)。私が訪れたときは現代アートを展示していましたが正直言ってよく分かりませんでした。ここの見学はエントランスホールだけにとどめて、展示物を観賞するならレオポルト美術館や建築センターに入ればよかったですね。
【05】
バーコード状の割り付け
【06】中央:レオポルト美術館、右:ホールE+G
【08】
クンストハレ ウィーン(KUNSTHALLE wien)
既存建物に囲まれた細長い敷地のため、クンストハレ ウィーンの全体像を見通すことはできないものの、新旧建物の間には両者が対峙した面白い路地が出現しています。
外壁はレンガ貼り。つまり、既存建物の中に黒(近代美術館)、白(レオポルト美術館)、赤(クンストハレ ウィーン)の3色を挿入したというわけです。
名称 | ミュージアムクォーター ウィーン MuseumsQuartier Wien 註1 |
---|---|
設計者(当初) | ヨハン ベルンハルト フィッシャー フォン エルラッハ Johann Bernhard Fischer von Erlach レオポルト メイヤー Leopoid Mayer |
設計者(増改築後) | オルトナー&オルトナー Ortner & Ortner マンフレド ヴェドルン Manfred Wehdorn |
所在地 | ウィーン1区 |
用途 | 当初:馬術学校、厩舎 増改築:美術館、博物館 |
竣工 | 当初:18〜19世紀 増改築後:2001年 |
構造・規模 | 未確認 |
交通 | 鉄道:地下鉄U2号線 Museumsquartier 駅または Volkstheater 駅下車 |
補註
- MuseumsとQuartierの間にスペースが無いのは公式サイトの通りでタイプミスではない。
参考文献
- 『a+u』2002年1月号、新建築社
- 『世界の建築・街並みガイド5』23頁、エクスナレッジ
- 『建築文化』2002年2月号 特集:ウィーン20世紀建築MAP、彰国社
リンク
公開日:2002年9月8日、最終更新日:2011年6月19日、撮影時期:2002年1月
カメラ:Nikon COOLPIX 775(Photoshopで修正)