西山記念会館00
西山記念会館 ( 1/2 )
Nishiyama Memorial Hall
兵庫県神戸市、村野藤吾、1975(昭和50)年、現存せず
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建物の概要

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西山記念会館は、川崎製鉄(現JFEスチール)の初代社長である西山弥太郎氏を記念する建物として、当時の川崎製鉄本社の隣に1975(昭和50)年に竣工。内部にはホールや会議室があり、株主総会や入社式、会合などの会社の行事に使われてきました。また、西山氏の功績を紹介する記念室もありました。
 
非常に独特なデザインをしていますが、村野藤吾氏の設計であるからには奇をてらったものではなく、設計上の条件からこの形は生じています。
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三叉路から導かれたデザイン

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西山記念会館の敷地は幹線道路の三叉路に面しているため、多方向から視線を浴びることになります。そこで、建物に特定のファサード(正面)を設けずどの角度から見ても均等になるようなオブジェ的な外観に仕上げられているわけです。どことなく怪獣を連想させながら全体的には気品が漂うという不思議なデザインには、円熟期の村野藤吾の卓越した造形センスが溢れています。
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平面計画

また、ホール建築は機能的な理由からは矩形(長方形)が多いのですが、西山記念会館の場合は三叉路の角地という特殊な敷地に合わせて平面も三角形になっており、その中心にホールを、3つの頂点には階段・エレベーター・便所等を配置するプランになっています。写真04は階段室の採光窓。意匠とプランニングが破綻無く結びついている点はさすがです。

経営環境の変化に伴い、解体へ

川崎製鉄は2002(平成14)年に日本鋼管(NKK)と経営統合してJFEスチールとなり、本社機能は東京に移転。そして、西山記念会館は2011(平成23)年3月に閉鎖されました。建物は不動産会社に売却されて空き家のままでしたが、神戸新聞の2012(平成24)年10月19日付記事によると、記事の掲載時点で会館は解体工事中とのこと。経営環境の激化に伴い、企業が福利厚生施設を抱える時代が終わったことを物語るニュースです。
 
それは分かるものの、しかし、関西の中心に数多くの名作を手掛け、関西の経済と文化の発展に貢献した村野藤吾氏の建築を維持できない現状は、文化的に後退しているのではないかという気がしてなりません。

建物名

西山記念会館

Nishiyama Memorial Hall

設計者

村野藤吾 / 村野・森建築事務所

MURANO Togo / Murano and Mori, Associated Architects

所在地

兵庫県神戸市中央区脇浜町3-4-16

用途

ホール

竣工

1975(昭和50)年

構造・規模

構造:鉄筋コンクリート造+鉄骨造

階数:地下2階 地上5階 塔屋1階

敷地面積:1,757m2、建築面積:1,048m2、延床面積:6,349m2

備考

1976年 第17回BCS賞(建築業協会賞)

2012(平成24)年に解体、現存せず。

参考文献

  1. 『村野藤吾建築案内』村野藤吾研究会、TOTO出版
  2. 『建築MAP 大阪/神戸』TOTO出版

リンク

  1. 日本建築学会最新の要望書・提言・報告要望書 > 2011年10月7日 旧西山記念会館の保存に関する要望書(PDF)
  2. 西山記念会館 ウィキペディア

公開日:2010年6月20日、最終更新日:2014年2月22日 スライドショーの写真を追加、撮影時期:2006年1月
カメラ:Nikon D50(Photoshopで修正)

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