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国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館 ( 2/3 )
Nagasaki Natinal Peace Memorial Hall for the Atomic Bomb Victims
長崎市、栗生明 他、2003(平成15)年
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【06】
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【07】中央奥の棚には死没者名簿が納められている

地下の追悼空間

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祈念館の中心となるのがこの追悼空間。6本の柱が2列に、つまり計12本のガラスの柱が並んでいます。列柱の真上が前述のガラスの壁で、壁の間のトップライトから差し込む光と、ガラスの柱自体の発光によって、地下空間は淡い光に満ちています。
 
この列柱は、ゴシック様式の教会建築をイメージしていると見ていいでしょう。もちろん直接的な引用ではなく、ゴシックが持つ垂直性の要素を抽象化して取り入れています。
 
しかも、本来なら荷重を負担すべき柱がガラスに置き換えられたことで(つまり構造的には柱は必要ない)、物質的な存在感が希薄になっています。コンクリート打放しの地下空間に並ぶ結晶のようなガラスの柱─この幻想的な場所に身を置くと、雑念が消えて純粋に祈りを捧げる気持ちになります。
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【08】

建築と平和

追悼施設や慰霊碑、資料館など、戦争に関する何らかの施設を建てようとすると、思想や立場の違いから対立する場合がしばしば見られます(例えば国立追悼施設の是非や遊就館の展示問題など)。
 
そもそも、何かの施設を作って平和を訴えることがどれほど有効なのでしょうか。相変わらず戦争とテロと弾圧が続く現実を前にすると、無力感に囚われそうになります。
 
設計者の栗生明氏は、美しい建築を造ることでこうした現況に抵抗を試みたのではないかと私は思います。戦争が愚かな殺戮と破壊であるなら、その正反対である美の創造こそ建築や芸術が為し得る抵抗運動といえるでしょう。例え壊されるときは一瞬だとしても…

名称

国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館

Nagasaki Natinal Peace Memorial Hall for the Atomic Bomb Victims

設計者

栗生明 / 栗生総合計画事務所

KURYU Akira / A.KURYU ARCHITECT & ASSOCIATES

国土交通省九州地方整備局営繕部

Kyusyu Regional Development Bureau

所在地

長崎市平野町7-8

用途

祈念館(追悼施設)

竣工

2003(平成15)年

構造・規模

構造:鉄筋コンクリート造、階数:地下2階 地上1階

建築面積:50.49m2、延床面積:2,999.58m2

交通

鉄道:長崎電気軌道(路面電車)浜口町駅下車

備考

第19回村野藤吾賞

第46回建築業協会賞(BCS賞)他複数受賞

宗教施設ではありませんが厳粛な祈りの場ですので、見学時は節度ある行動をお願いします。

左から長崎原爆資料館、国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館

補注

  1. 7万人は1945年12月までの推計死没者数。なお、2010年8月9日現在で死没者名簿には約15万人の方々のお名前が記されている。

参考文献

  1. 『新建築』2003年8月号、新建築社
  2. 『建築MAP 九州/沖縄』143頁、TOTO出版

リンク

  1. 国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館 公式サイト
  2. 国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館栗生明 ウィキペディア
  3. 栗生総合計画事務所 > プロジェクト > 九州・四国 国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館
  4. 文化環境研究所 > ジャーナル年度別バックナンバー2003 > 国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館 建築、植栽、展示・情報を一体としてとらえた施設づくりをめざして
  5. KENCHIKU > 建築デザイン最前線 > 国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館

公開日:2004年7月14日、最終更新日:2011年7月23日、撮影時期:2003年11月・2009年12月
カメラ:Nikon COOLPIX775、Nikon D50(Photoshopで修正)

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