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バターシー発電所 ( 1/2 )
Battersea Power Station
ロンドン、ジャイルズ ギルバート スコット、1933年
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【02】

廃墟と化した神殿のような発電所

ロンドンのテムズ川沿い、屹立する4本の煙突が実に特徴的なこの建物はかつての石炭火力発電所です。1933年にまず煙突2本の状態で完成、さらに2本を増築して現在の姿になったのは1953年のこと、そして1982年に閉鎖されました。
 
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テートモダン

同じように閉鎖中だったバンクサイド発電所は、2000年に テートモダンという現代美術館に生まれ変わって一躍ロンドンの観光名所になりました。一方、バターシー発電所は廃墟のまま長年放置。夕日を浴びて紅く染まった姿はまるで古代の神殿のようで、息を呑む迫力です。
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【03】

設計者

バターシー発電所・バンクサイド発電所とも設計したのはジャイルズ ギルバート スコット。彼の父と祖父も著名な建築家で、祖父のジョージ ギルバート スコット(父と祖父は同名)はセント パンクラス駅のステーションホテルなどを設計しています。

洋楽ファンにも有名

この発電所はピンク フロイドのアルバム『アニマルズ』のジャケットに描かれたことでも有名で、洋楽ファンがロンドン観光する際は、ビートルズのアルバム『アビイ・ロード』の横断歩道とともに訪れるべき巡礼地に数えられています。参考までに述べておくと、バターシー発電所の最寄り駅は地下鉄のVictoria駅かPimlico駅。私ならPimlico駅からテムズ川沿いを煙突を目印に向かうルートをお薦めします。
 
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テムズ川のやや上流からの光景

また、Victoria駅から列車に乗ると駅を出発してすぐ進行方向左手に発電所が見えますので、撮影するなら予めカメラを構えておいた方がいいでしょう。
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【04】

敷地周辺の状況

なお、発電所の敷地は高い塀で囲まれて立ち入りできないので、川を渡って間近に行ってもほとんど見えません。敷地周辺は人通りがほとんどありませんので、接近する場合は十分に気を付けてください。写真04は塀の隙間から撮った写真ですが、後述する再開発工事が始まれば覗き見は難しいかもしれません。

マレーシアの企業が再開発か

バターシー発電所については、過去、何度も再開発計画が持ち上がっては頓挫しました。筆者が把握している最新情報では、2012年にマレーシアの企業連合が敷地を落札し、高層集合住宅などを建設する再開発計画が進行中です 註1 。発電所の建物は改修して保存するようですが、現状がどの程度維持されるかはまだ分かりません。

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【05】

あのパビリオンが移築

さて、敷地正門の門扉越しに敷地内を覗いたところ、何やら奇妙な建築物を発見(写真05) …ってこれ、建築家の伊東豊雄氏が設計したサーペンタイン ギャラリー パビリオン 註2 ではないですか! こんなところに移築されていたとは。しかし、発電所の敷地は立ち入り禁止なので、このパビリオンも遠目に眺めるだけしかできません。本気で門を乗り越えようかと考えましたがどうにか思いとどまりました。ああ、中に入りたかったですね。
 
追記:2013年時点のGoogleマップを見ると、パビリオンがあった場所は更地になっていました。どこかに再移築先されたのか廃棄されたのか、詳しいことは分かりません。

名称

バターシー発電所(バタシー発電所とも)

Battersea Power Station

設計者

ジャイルズ ギルバート スコット

Giles Gilbert Scott

住所

イギリス、ロンドン

188 Kirtling Street, London SW8 5BP

用途

発電所(廃墟状態を経て現在は再開発事業が進行中)

竣工

1933年

構造

鉄骨造

交通

鉄道:地下鉄 Pimlico 駅で下車、徒歩約20分

備考

敷地への立入不可。敷地近辺は人通りが少ないので注意のこと。テムズ川の対岸が見学・撮影のベストポジション。

再開発に伴う建設工事のため、今後は外観が変化する。

マーカー上からチャンネル4、バターシー発電所


補註

  1. マレーシアへのビジネス進出等をサポートするウェブサイト ASSET PREMIER(アセット プレミア)の記事によると、マレーシアの不動産デベロッパー SPセティア社、パームオイル最大手で不動産業も手掛けるサイムダービー社、マレーシアの企業年金基金(EPF)の3社連合が、2012年に4億ポンド(約600億円)でバターシー発電所跡地を落札したとのこと。
  2. サーペンタイン ギャラリー(Serpentine Gallery)はロンドンのケンジントンガーデンにある美術館。この美術館では2000年以降、夏季限定の仮設パビリオンを設置している。毎年、異なる建築家が手掛けるパビリオンのデザインは実に個性的。2002年のパビリオンが伊東豊雄氏の設計だった。他の年も何人かの日本人建築家が参加している。

リンク

  1. UK Adapta. > Architecture > All Articies > Battersea Power Station
  2. Battersea Power Station 再開発業者であるBattersea Power Station Development Companyの公式サイト(英語)。完成予想パースによると、発電所の周囲を高層集合住宅で壁のように取り囲む計画らしい。テムズ川の対岸からは見えるが、それ以外の角度では発電所が隠れてしまうかもしれない。
  3. Battersea Power Station ウィキペディア英語版
  4. ケンプラッツ > 「普通じゃない」発電所遺構を核にロンドン大改造 閲覧には会員登録が必要

公開日:2006年6月17日、最終更新日:2013年8月17日 文章の修正・追記、写真の修整・追加、撮影時期:2004年9月
カメラ:Panasonic LUMIX DMC-FX1(Photoshopで修正)

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