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セント グレゴリー アンド セント マーチン教会 ( 1/2 )
Parish Church of St Gregory and St Martin
ケント州ワイ、 13世紀
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【01】
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【02】

イギリス田園地帯の普通の教会

セント グレゴリー アンド セント マーチン教会は、イングランド南東部ケント州のワイという村にある教会です。筆者は2004年にこの村を訪れて2〜3日ほど滞在しました。村全体の様子は 別の記事で述べるとして、本稿では教会について紹介いたします。
 
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周囲に墓標が不規則に点在する光景は、正に田舎町の教会というか、映画などで見る「ヨーロッパの古い教会」のイメージそのもの。現地の人々には失礼ながら、夜中に地面から何かが出てきそうで、一人で夜にここを歩く勇気はありません。そんな第一印象でしたが、実際はとても味わい深い建築でした。
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【03】

建設過程の概要

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塔屋はバトルメント(凹凸の腰壁)が付いていて、教会というより城郭風。一見しただけでは建物全体が同時期の建設に思えますが、塔屋とエントランスの開口部でアーチの形状が異なることから(半円アーチと尖塔アーチ)、別の時代の建設だと分かります。

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13世紀当時の模型(南立面)

ネット上の英文を自動翻訳したところでは、この教会が建立されたのは13世紀。当初の建物は今よりも大きく、十字型平面の交差部に塔屋と尖塔がありました(模型写真)。しかし、1572年に落雷で尖塔が崩壊。1686年には塔屋が崩壊して教会の東側も崩れてしまい、その後に再建されたのが現在の建物です。すなわち、西側の身廊(模型写真の左側)が13世紀から残っている部分になります。
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【04】

古い構造形式の小屋組

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さて、身廊(信者が集う空間)に入ってみましょう。建築的に注目すべきは屋根の小屋組で、カラー ルーフ(collar roof)というトラスが成立する以前のシンプルな構造形式で造られています(これは現在も欧米の建築で採用されているようだ)。日本語では繋ぎ小梁付き垂木小屋屋根といい、向かい合った垂木を繋ぎ梁(写真の上の方に見える小梁)により連結した構造です。小さな建物なら繋ぎ梁だけで十分ですが、ここでは大梁も用いています。
 
なお、この教会は決して特別な存在ではなく、他の場所でもカラー ルーフを見かけました。つまり、イギリスは中世の建築が普通に残っているわけです。
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【05】

“神の家”としての教会建築

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小屋組以外の建築的特徴としては、身廊と側廊を分けるアーケードの柱が線条要素でアーチが尖塔型であること(写真05)、そしてステンドグラスが挙げられます。いずれもゴシック建築特有のデザインです。
 
他に目を引いたのがパイプオルガン。小さな村の教会にしてはなかなか立派なものだと驚きましたが、あるいはそれは日本人的な感想で、教区教会ならこの程度は珍しくないのかもしれません。
 
筆者が訪れたとき、教会には誰もいませんでした。遠いイギリスの田舎町で、西日が差し込む無人の教会に佇んだあの瞬間は、非キリスト教徒の私でさえ神に近付いたような気がしたものです。
名称

セント グレゴリー アンド セント マーチン教会

Parish Church of St Gregory and St Martin

Parish Churchは教区教会の意味

設計者

不詳

所在地

ケント州ワイ、イギリス

Wye, Kent, UK

用途

教会

竣工

身廊は13世紀、それ以外は17世紀後半以降と思われる。

構造

石造 一部木造

交通

鉄道:Ashford to Ramsgate (via Canterbury West) Line, Wye 駅下車 徒歩10分

マーカー上からセント グレゴリー アンド セント マーチン教会、ワイ

参考文献

  1. 『絵で見るイギリス人の住まい1─ハウス─』マーガレット/アレクザンダー ポーター著、宮内さとし訳、相模書房

リンク

  1. Welcome to WyeChurchesParish Church of St. Gregory and St. Martin

公開日:2012年8月5日、最終更新日:2012年8月5日、撮影時期:2004年9月
カメラ:Panasonic LUMIX DMC-FX1(Photoshopで修正)

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