藤ノ木団地
概要
藤ノ木団地は、福岡県の北九州市若松区に昭和20年代末に建てられた団地である。北九州市は1963(昭和38)年に五市が合併して誕生した都市であり、団地の銘板には若松区の前身である「若松市」の名前が刻まれていた。県内の昭和20年代団地の多くは福岡県住宅協会(現 福岡県住宅供給公社)が建設したものだが、藤ノ木団地は福岡県営住宅だ。県営住宅で初期の住棟が21世紀まで残っていたところは少ない。なお、近隣にある同名の公団(現UR)住宅と混同しないよう注意してほしい。
敷地の南側には日本ヒューム童子丸社宅があって、ふたつの古い団地が並んでいた。もっとも、傾斜地にヒナ壇上に造成された敷地のため、視覚的な一体感はそれほどでもなかった。現在、藤ノ木団地は高層棟に建て替えられ、日本ヒューム童子丸社宅も解体されて、初期の住棟は現存しない。
藤ノ木団地には3階建と2階建の2種類の住棟があった。3階建住棟は階段室型板状住棟で、平行配置に階段室が南北で向かい合うNSペアを構成し、2棟の間には公園があった。駐車場と化すことなく、NSペア本来の姿が維持されていたのは素晴らしい。
『福岡県住宅復興誌 I 』に載っている図面と藤ノ木団地の外観を照合したところでは、この住棟は福岡県の標準設計54FC型と思われる。平面図を読むと、戦後の住宅設計の理念である食寝分離と就寝分離をきちんと踏まえていることが分かる。また、2階建でもバルコニーにダストシュートを付けている。
データ
住所:福岡県北九州市若松区童子丸2-9
竣工:1954(昭和29)年度
撮影:2005(平成17)年8月
備考:建て替え済み、古い住棟は現存せず
参考文献
- 『福岡県住宅復興誌 I 』
作成日:2012/8/13、最終更新日:同左
福岡県営住宅 54FC型平面図
『福岡県住宅復興誌 I 』から引用