香川県立体育館
概要
香川県立体育館は丹下健三氏の設計で1964(昭和39)年に竣工した。ちなみに丹下氏の名作中の名作である代々木国立屋内総合競技場と東京カテドラルの竣工も同年で、この三作はまさに彼の絶頂期の建築である。
屋根の構造形式は代々木競技場が吊り構造、東京カテドラルがHPシェルであるのに対して、香川県立体育館はHPシェルの屋根をケーブルの吊り構造で支える方法が採用されており、東京の二作を構造的に融合したとの見方ができるだろう。側面は壁のように見えるが構造的には梁の役割を担っている。23mも迫り出した両端部は、片持ち梁とスラブの格子梁で支えられ、上に大きく反っているため不安定さは感じられない。全体は三角形の柱で持ち上げられた形になっていて、まるで宇宙船といった超越的な存在が鎮座しているような神々しい雰囲気すら漂う。側面に突き出た樋状の部分は雨水の落とし口(建築用語でガーゴイル)だ。
この体育館は歴史的にも重要な建築であることは間違いないが、特殊な構造ゆえ耐震改修工事には多額の費用が必要となり、工事入札は3回も不調を繰り返した。その結果、香川県は工事の実施を断念して2014(平成26)年9月末をもって閉館を決定。その後の見通しは不明で体育館の解体もあり得る。