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ガソメーター ( 2/4 )
Gasometer
ウィーン、コープ ヒンメルブラウ他、1896・2001年
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【09】
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【10】

内部の用途

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ガソメーターの内部は4棟とも上半分が集合住宅で、下半分には4棟すべてに商業施設が、さらにB棟にホール、D棟に市の公文書館が入っています。このうち私はA・B棟の商業施設とB棟の集合住宅を見学しました。
 
A棟の商業施設は中央に吹き抜けがあるドーナツ状のプランになっています。テナントはリーズナブルな価格帯が多くて日本のショッピングモールと大して変わりません。これだけならさほど面白味がありませんが、上に目を向けると印象が一変します。
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【11】

大空間の吹き抜けを見上げる

上半分を占める集合住宅もドーナツ状、要するにA棟の増築部分全体がドーナツ型の建物で、外壁と合わせて二重の円を構成している格好です。そして、商業施設と集合住宅の間に架かるガラスのドーム越しにお互いを見通すことができます。下から見上げるとまるでスペースコロニーの中にいるようでなかなかの迫力です(B・C棟も同様の構成)。

集合住宅のヴォイドの機能

集合住宅は、円筒を9分割した形の住棟(切り分けたバームクーヘンの一片を思い浮かべてほしい)と、それら9棟の間のヴォイド(空隙)から構成されています。ヴォイドの役割としては通風・採光・閉鎖感の緩和、そしてガスタンク外壁の内側を露出させることで、内部の人間に歴史の繋がりを感じてもらう意図があるものと思われます。

日本で可能か

下階に店舗、上階に住宅という構成は日本でも珍しくないものの、両者が吹き抜けでつながって視線が通るプランはほとんど(まったく?)例がありません。例えば、表参道ヒルズも下が吹き抜け有りの商業施設で上が集合住宅という構成ですが、吹き抜けから住宅は見えません。法律上の防火区画の問題もさることながら、日本人は視線を気にする傾向が強いので、ガソメーターのような空間は国内では実現が難しいところです。

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【12】

B棟の商業施設

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B棟は下階がホールで上階は集合住宅、その中間にワンフロアだけ商業施設が入っています(右の写真)。タジン鍋のような天井のトップライトから集合住宅を見た様子が写真12。
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【13】

集合住宅のエントランスホール

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写真13はB棟の集合住宅のエントランスホール。ホールの上部には片持ちスラブで何かのコーナーらしきものが突き出ています(何の用途かは失念)。舞台装置を思わせるケレン味あふれるデザイン。
 
ホールに入った正面の壁には設計者によるB棟のラフ スケッチが描かれています。「く」の字のビルは初期段階から考えていたようですね。ちなみに「GASOMETER」とはドイツ語でガスタンクという意味です。
 
B棟の集合住宅には一般向けの他に学生寮も含まれています。エントランスホールから先は住民しか入ることができませんが、筆者の後輩がウィーンの大学に留学中でこの学生寮に住んでいたので見学させてもらいました。
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