ぐりんぐりん00
アイランドシティ中央公園中核施設 ぐりんぐりん ( 2/4 )
Island City Central Park GRINGRIN
福岡市、伊東豊雄、2005(平成17)年
ぐりんぐりん

【07】
ぐりんぐりん

【08】

内部空間の用途

内部には温室【08〜10】、フリースペース【07】、体験学習スペースがあり、温室は有料ですが100円という低料金で、フリースペースは無料で入場できます。温室には、福岡市と姉妹都市関係にあるマレーシアのイボー市から贈られた亜熱帯植物が植えられています。なお、屋上通路には温室を通じてしか立ち入ることができません。

ぐりんぐりん

【09】

来場者の少なさ

ここを訪れたのは休日の昼間なのに人がほとんどいない様子を見て、最初は少々驚きましたが、冷静に考えると無理もないなと思いました。
 
この建物があるアイランドシティ中央公園はそれほど大きな公園ではなく、ぐりんぐりん以外に目玉となるものがないので、公園を訪れる人の大半はアイランドシティの住民でしょう。しかも、私が訪れたとき、公園の広場は大勢の親子連れで賑わっていたのに、その目と鼻の先にあるぐりんぐりんには誰も行こうとしませんでした。つまり、地元住民には温室なんて一度行けば十分であって、シンプルな広場に勝る遊び場はないわけです。
 
この状況は、根本的には福岡市の人工島計画の見通しの甘さやPR不足に原因があります。市営植物園や他の大きな公園に行けばたくさんの植物が見られるのに、半端な規模で周辺に何もない人工島公園にわざわざ出かける島外の人間はほとんどいません。

ぐりんぐりん

【10】

忘れられた名作

そもそも、計画段階から環境破壊だと強く批判されていた上、福岡市が引き起こした人工島に関わるいくつかのトラブルも影響して、福岡市民・県民のアイランドシティに対するイメージは決して良いとはいえないのが実情です。
 
福岡市が中央公園とぐりんぐりんを建設した背景には、環境破壊批判に対するイメージアップの意図があったと思われますが、ひとつの建物と公園にそれを期待するのは無理な話ですし、入場者がこうも少なくてはイメージアップどころではないでしょう。
 
鉄筋コンクリート造で自由曲面を実現するには、高度な施工技術と膨大な手間がかかっています。ぐりんぐりんはまさに職人技の結晶であり、環境共生のモデルケースとなるべき優れた建築であるのに、閑散とした状態に置かれているのは残念でなりません。 註2

建物名

アイランドシティ中央公園中核施設 ぐりんぐりん

Island City Central Park GRINGRIN

設計者

伊東豊雄 / 伊東豊雄建築設計事務所

ITO Toyo / Toyo Ito & Associates, Architects

所在地

福岡県福岡市東区照葉4(アイランドシティ中央公園)

用途

温室

竣工

2005(平成17)年

構造・規模

構造:鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造、階数:地上1階

建築面積:5,162.07m2、延床面積:5,033.47m2

交通

バス:アイランドシティ中央公園前下車、駐車場有り

備考

月曜ではなく火曜が休館日なので注意。

中央:ぐりんぐりん、右下:ネクサスワールド


補注

  1. 「季刊生命誌」54号での中村桂子氏との対談でぐりんぐりんを説明する際に、温室と手すりでデザインの意図がスポイルされた旨を述べている。
  2. ぐりんぐりんの建設に多くの労力とコストが注がれたにも関わらず、福岡市はそれを十分に活用できていないのではないか、という趣旨。

関連サイト

  1. アイランドシティ中央公園 公式サイト
  2. 竹中工務店建築作品タケナカトピックス2006自由曲面シェル構造の「丘のような建築」――アイランドシティ グリッピの森 中核施設 ぐりんぐりん

参考文献

  1. 『新建築』2005年9月号、新建築社
  2. 『日経アーキテクチュア』2004年11月15日号
  3. 『建築MAP 九州/沖縄』45頁、TOTO出版(この本に載っている住所は誤り。同書は誤記が多いので要注意)

公開日:2010年9月5日、最終更新日:2010年9月5日、撮影時期:2007年11月
カメラ:Nikon D50(Photoshopで修正)

inserted by FC2 system