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大英博物館 ( 2/4 )
British Museum
ロンドン、 スマーク兄弟 + ノーマン フォスター、1847・1857・2000
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【04】

中庭の変遷

ロバート スマークは見学者が自由に出入りできる空間として博物館に中庭を計画したものの、すぐに図書館が増築されてしまいます。博物館のイメージが強いのですが、実は設立当初からここは図書館としても重要な役割を果たしていました。しかし増え続ける蔵書量に建物が対応できず、建物内部で閲覧室の移転を繰り返したり増築したりで凌いできたのでした。
 
そこで、博物館の中興の祖として知られる第6代館長アントニオ パニッツィは中庭の活用を発案します。ロバート スマークの弟シドニー スマークの設計で中庭に円形の閲覧室がオープンしたのは1857年のことです。
 
図書館は許可証を持つ者しか利用できない上に閲覧室の周囲には書庫が建てられたため、長年にわたり中庭は一般市民や観光客には縁がない場所でした。ところが1998年に別の場所にオープンした大英図書館への図書館部門の移転に伴い、中庭はようやく開放されることになります。

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【05】

グレート コート

この中庭=グレート コート(Great Court)の改修工事を手掛けたのはやっぱりこの人、イギリス建築界の巨匠ノーマン フォスターでした。彼は円形閲覧室以外の建物は撤去して上部をガラスの屋根で覆うという明快なデザインを示します。
 
見学者が中庭を通り抜けできるようになったことで、これまで複雑で混雑を引き起こしていた見学者の動線は一気に単純化されました。ここには案内カウンター、ミュージアムショップ、カフェ、レストラン、トイレといったサービス機能が集まっています。
 
壁も床も白っぽく仕上げられた空間は、紫外線を60%カットする遮光ガラスから降り注ぐ柔らかな光で満たされています。古典建築の内部でありながらまるで現代建築のようなニュートラルな空間です。世界中からやってきた観光客がここに集い、語らい、歩き回る様子は、自由な社会の公共性をよく表しているといえるでしょう。

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【06】

ガラス屋根の特徴

屋根を見上げると、これほどの面積を覆っていながら太い梁や張弦梁を使っていない構造に感心します。100m×70mの長方形の中庭とその中心に建つ円形閲覧室との隙間を覆うガラスの枚数は3000枚、総重量は180tにも及びます。それだけのガラスを枠と骨組みを兼ねる鉄骨トラスで軽やかに見せる構造は、何気ないようで実際はかなり高度な技術が用いられています。

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