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大英博物館 ( 3/4 )
British Museum
ロンドン、 スマーク兄弟 + ノーマン フォスター、1847・1857・2000
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【07】

博物館図書館

かつて大英博物館図書館の中心だったこの閲覧室(Reading Room)は、図書館部門の移転後も博物館の図書室としてほぼ以前の姿のまま残り、しかもうれしいことに一般公開されるようになりました。
 
人々が行き交うグレート コートから閲覧室に入るとそこは本に囲まれた別世界です。直径42mのドームが架かる円形部屋の壁面は全て書架に覆い尽くされています。世界中から人類の遺産を集めた博物館の中心にあって、さらに本に囲まれているという二重構造を成すこの空間に立つと、膨大な情報量のイメージに身震いがします。
 
この閲覧室には多くの著名人達が来ました。カール マルクスが毎日のように通い詰めて『資本論』を書き上げたことは特に有名なエピソードとして語り継がれています。日本人では博物学者の南方熊楠も来ていたものの、他の閲覧者とトラブルを起こして出入り禁止になってしまったそうです。

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【08】

円形閲覧室の影響

円形閲覧室というプランは,オックスフォード大学のラドクリフ カメラ 註1 などいくつか前例があったようですが、大英博物館図書館での採用はその後の図書館計画に大きな影響を与えました。
 
グンナー アスプルンドが設計したストックホルム市立図書館(スウェーデン、1928)や、アルヴァ アアルトの設計によるロバニエミの図書館(フィンランド、1968)などの閲覧スペースのプランには、大英博物館図書館のイメージの継承を読み取ることができます。

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【09】

「知の集積」の視覚効果

平面計画上、円形は完結した形態なので書架を追加できないという難点があります。増え続ける蔵書に対応するには書架を平行に並べて次第に増築していった方が合理的なのは明らかです。しかし、周りを本に囲まれた空間に身を置くことには、言い知れぬ居心地の良さがあることもまた確かです。それは買い集めたCDやマンガを自分の部屋に積み重ねることと本質的には同じであって、結局、人は情報を何らかの物質に置き換えて目で見て確かめなければ安心できないのかもしれません。
 
であるならば、ハードウェアとネットワークがどんなに発達しようとも図書館は生き続けるのではないでしょうか。世界の知の殿堂とも言うべき閲覧室の中心でそんなことを思いました。

建物名

大英博物館

British Museum

設計者

ロバート スマーク+シドニー スマーク

Robert Smirke + Sydney Smirke

ノーマン フォスター

Norman FOSTER / Foster and Partners

所在地

ロンドン

Great Russeell St., London WC1

用途

博物館・図書館

竣工

ファサード 1847年、閲覧室 1857年、グレート コート改修 2000年

構造

組積造および鉄骨造

交通

鉄道:地下鉄 Tottenham 駅または Holborn 駅で下車、徒歩約10分

備考

円形閲覧室への一般見学者の立ち入りは出入口付近のみ。静かに見学すること。撮影は可能(フラッシュ禁止)。


補注

  1. Radcliffe Camera:ラドクリフという医師の功績を記念して1749年に建てられたオックスフォード大学の図書館のひとつ。この camera とは room を意味するラテン語。

リンク

  1. The British Museum 公式サイト日本語版
  2. All About旅行・レジャーイギリス大英博物館ツアー(その1)
  3. 大英博物館 ウィキペディア

公開日:2005年3月6日、最終更新日:2011年6月6日 スライドショーを追加、撮影時期:2004年9月
カメラ:Panasonic LUMIX DMC-FX1(Photoshopで修正)

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