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セミ デタッチド ハウス ( 1/3 )
semi-detached house
ケント州ワイ
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【11】
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【12】

カントリーサイドの小さな村

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2004年9月、筆者はイギリスのワイ( Wye )という村に3〜4日ほど滞在する機会がありました。当時、筆者の従兄が村内の大学に研究者として留学しており、イギリスの観光を兼ねて訪問したのです。ワイは、イングランド南東部のケント州にある人口約2300人の村で、ロンドンから鉄道で90分ほどの距離。特別な観光名所などはないものの、いかにも田園地帯(カントリーサイド)の集落らしい風光明媚な土地柄が魅力的でした。
 
村の概要教会建築については、それぞれ別の記事で紹介している通りです。本稿では、従兄が暮らしていた住宅を通して、イギリスの典型的な住まいであるセミ デタッチド ハウスについて説明いたします。
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【13】

セミ デタッチド ハウス(semi-detached house)

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セミ デタッチド ハウスとは、右図のように1棟を左右で分割して2つの住戸が入っている建物で、最小規模の集合住宅といえます。外観はほとんど一戸建の住宅に近いものの、立面が左右対称であればおおむねセミ デタッチド ハウスだと判断していいでしょう。
 
セミ デタッチド ハウスは18世紀にイギリスで登場し、カントリーサイドの一戸建を住宅の理想像とするこの国の人々に、比較的低価格で一戸建て風の住宅に住めることが受けて広く普及しました。
 
なお、セミ デタッチド ハウスを含めてイギリスの主な住居形式には下記の4種類があります。
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フラット
日本のマンションに相当する集合住宅。一住戸が複数の階を持っていないため、テラスハウスと区別してフラットと呼ぶ。
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テラス ハウス
日本の長屋に相当する集合住宅。長屋といってもグレードは高い。一住戸が2〜5階程度を有し、それが横に連続する。
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セミ デタッチド ハウス
一棟を左右対称に分け合い二戸が入る集合住宅。戸建て感覚で住めるのが特徴。
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デタッチド ハウス
一戸建の住宅。イギリスの住まいは左記3種類の集合住宅が主流だが、一戸建がないわけではない。
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配置図

スクエア

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さて、従兄は家族とともに Imperial College London Wye campus(当時)の研究者用住宅に入居していました。その配置計画から述べると、4棟のセミ デタッチド ハウスが中庭を囲むように並んでいます。これはスクエアという配置で、都市計画レベルから団地の住棟配置まで、イギリスでよく用いられる手法です。
 
各住戸にアクセスするには、西棟を貫通する通路から中庭に入ってから玄関に向かいます。エントランスの限定と住民の視線が届く中庭によって、ある程度の防犯性が確保されています。
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【14】

中庭

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中庭の広さはおよそ20m四方。シンプルな芝生敷きの空間です。垣根に囲まれた西棟住戸の専用庭が一部にあるものの、基本的にこの中庭は大学研究者用住宅に住む人々のセミパブリックスペース(半公共的空間)になっています。
 
海外からの研究者は子供連れの場合が多く、従兄夫婦も幼い子供を連れてきていました。慣れない外国生活を送る研究者とその家族にとって、子供を目の届く範囲で安心して遊ばせることができる住環境は、実にありがたいものです。もしかしたら大学側はその点を考慮してスクエア型にしたのかもしれません。

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【15】

周囲の環境

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研究者用住宅は本校舎から数百mほど離れた場所に建っていて、他に大学の教員住宅(写真15)、学生寮、マナーハウス、庭園があります。教員住宅は2階建のテラスハウスです。もともとこの区画は19世紀に建てられたマナーハウスの敷地だったらしく、大学の所有になった後も良好な環境が維持されてきました。
 
しかし、 ワイの記事(3ページ)で述べているように、大学の上部組織の事情でワイ キャンパスは2009年に閉鎖されてしまいます。その後、この研究者用住宅をはじめとするワイ キャンパスの関連施設がどうなっているのかはよく分かりません。
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