もう一方のテラスハウス(いわゆる公団テラス)は「56-TN-2D」というタイプだ。1956年度標準設計のテラスハウスで、間取りは北入りの2Dという意味である。実はこれは55-TN-2D、つまり公団が発足した初年度である1955年度のテラスハウスとほぼ同じプラン。55-TN-2Dは公団の委託を受けた柳設計事務所というところが設計しており(参考文献1)、1956年度型も公団が若干変更したものの実質的には同事務所の設計といっていいだろう。
右は56-TN-2Dの平面図だ。現在の不動産用語ではDは「ダイニング」を意味するが、図面に「台所・居間・食事室」と記されているように、公団テラスの符号におけるDは実際はLDKを示すと解釈して差し支えない(LDKとしてはやや狭いが)。
構造は鉄筋コンクリート(RC)造だが、界壁のRC造箇所は隅部の壁柱のみに抑えられ、界壁の中間はコンクリートブロックが使われている。屋根の形状はフラットルーフ(もちろん水勾配は付いている)。装飾を廃した白い箱形というシンプルなデザインだ。特にバルコニー側立面におけるスラブと袖壁、サッシによる構成はなかなか美しい。
中層棟は56-4N-3DK、つまり1956年度標準設計の4階建(3階建もある)で北入りの3DKだ。このDKは一般の不動産用語と同じ意味。阿佐ヶ谷住宅は前川テラスが有名なせいか中層棟はあまり注目されず、実際筆者も時間の都合から中層棟はほとんど見ていないが、コモンの芝生と白い妻側(側面)の対比が印象に残っている。
作成日:2013/3/23、最終更新日:同左