冷泉公団住宅

概要

冷泉公団住宅は博多区の冷泉公園前に建っている公団市街地住宅だ。外壁や手すり・建具が改修されているのでさほど古く見えないが、1958（昭和33）年の竣工という福岡県では最初期の公団住宅である。既に公団／URの管理を離れているものの、外観から判断すると良好な状態が維持されているようだ。

建物は5階建のL字型で、1階にテナント、2～5階に住戸が入っている。戸数は28戸と少ない。公団は市街地住宅の住戸が表通りに面する場合、洗濯物といった生活感が露出しないよう吹きさらしのバルコニーを設けないことを設計の基本としているが、公団設立初期の段階ではその方針が確立していなかったのか、冷泉公団住宅は表通りにバルコニーが面している。

一見しただけでは建築的特徴に乏しいと感じられるが、それはパネルに変更されたバルコニーの手すりが目立つせいだろう。よく観察すれば、バルコニー・片廊下・階段室の造形で表情を造っていることが分かる。階段室の外壁に穴あきブロックを用いるデザインは、昭和30年代の市街地住宅や民間ビルによく見られる手法だ。

冷泉公団住宅の周辺には、店屋町ビル（1949・S24）と祇園ビル（1950・S25）という昭和20年代の鉄筋コンクリート（RC）造集合住宅も残っている。もともとこの一帯（いわゆる旧博多部）は昔から街の中心だった上、移転前の旧博多駅の存在や西鉄の路面電車が通っていたことで交通の便も良かった。冷泉公団住宅を含め、戦後初期のRC造集合住宅が多いのはそのような背景による。

上から上西町公団住宅、冷泉公団住宅、祇園町市街地住宅