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三池港 ( 3/4 )
Miike Dock
福岡県大牟田市、 1908(明治41)年
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【301】右は旧長崎税関三池税関支署。左のレールは三池炭鉱専用鉄道本線から三池港の倉庫に延びていた引き込み線の廃線跡。

船渠周辺の歴史的建築物など

続いて、船渠の周辺に点在する歴史的な建築物や船などについて述べます。三池港からは海外にも石炭を輸出していたので、輸出手続きを行う税関支署が設けられました。他には、明治時代のクレーン船や、築港当時の建設と思われるレンガ造の小屋が現存。さらに、炭鉱閉山後も見ることができる石炭の山について紹介します。

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旧長崎税関三池税関支署
住所:福岡県大牟田市新港町1-25
設計:三池製作所(推定)
竣工:1908(明治41)年
備考:大牟田市指定文化財。毎月第3土曜日に一般公開
 
長崎税関三池税関支署は、名前の通り長崎税関(長崎市)の支署として1908(明治41)年の三池港開港と同時に開庁し、三池港などの税関業務を担ってきました。現在、同支署は三池港の合同庁舎に入っていますが、開港当時の庁舎も現存しています。明治時代の税関庁舎の現存例は旧新潟税関(新潟市、1869・明治2年)、旧長崎税関下り松派出所(長崎市、1898・明治31年)、旧長崎税関口之津支署(長崎県南島原市、1899・明治32年)、旧門司税関(福岡県北九州市、1912・明治45年)、そして三池支署の全国5ヶ所のみであり、建築史的に貴重なものです。『三池製作所沿革史』に三池税関支署仮庁舎を建設した旨の記述があることから、同社の設計・施工により、将来は本庁舎に移る前提で仮の事務所を建設したらしいことが読み取れます。
 
“仮”といいながらこの建築は1965(昭和40)年まで税関として使われ、その後は三井鉱山関連会社の事務所や倉庫に使われる過程でかなり傷みますが、大牟田市の文化財に指定され、2012(平成24)年に復元工事が完了しました。建物は木造平屋建て、外壁は下見板張り、屋根は入母屋一部切妻。目立った装飾は出入口のペディメントくらいで、仮庁舎扱いだったからか基本的にはシンプルで実用本位なデザインです。


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クレーン船「大金剛丸」
クレーン部分:J.H. ウィルソン社(イギリス)
製造年:不明、1905(明治38)年に中古で購入
備考:休止中
 
船渠に停泊中のクレーン船「大金剛丸」は、そのクレーン部分が明治時代の製造という博物館級の古い船です。正確な製造年は不明ですが、1905(明治38)年に大阪から中古で購入されたこと、歯車にある「JOHN. H. WILSON & CO LTD LIVERPOOL」の刻印からイギリス リバプールのウィルソン社製クレーンであることが分かっています。吊り上げ能力は15トン、動力源は何と今なお石炭蒸気ボイラーで、火を入れてから稼働できるまで2時間は必要とのこと。この船は自走能力のない台船のため、タグボートによる曳航で移動します。なお、ボイラーは1973(昭和48)年に、クレーンが載る船体は1962(昭和37)年にそれぞれ更新されており 註5、購入当時の部分はクレーンだけです。


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レンガ造の小屋と貯炭場

それから、船渠の岸壁にあるレンガ造の小屋についても紹介しておきます。資料等が一切なくて詳細は不明。築港時か遅くとも大正時代の建設だろうと筆者は見ています。可燃物を保管する危険品庫のようですが、現在は使われていない模様。普通の赤レンガと、レンガサイズのコンクリートブロック(鉱滓レンガかも?)を半分ずつ使ったユニークなデザインが目を引きます。最初からこうだったのか、最初は片方だけで後で増築したのかは分かりません。船渠の周辺には、外装材を張り替えて新しく見えるだけで、古い倉庫が他にも現存する可能性があります。
 
また、三池炭鉱は閉山したとはいえ、引き続き三池港では産業用の石炭を保管する貯炭場が機能しており、黒々とした石炭の山を見ることができます。



スライドショー2 旧長崎税関三池税関支署(12枚)。
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スライドショー3 大金剛丸、レンガ造倉庫、貯炭場(10枚)。
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